はじめに
ICT活用【i-Construction】が進む建設土木業界では、今どのような変化が起きているのでしょうか。
i-Constructionって何?ICT施工は必ずしなければいけないの?
そんな疑問を解消するべく、日本キャタピラー様のご協力のもと、埼玉県秩父市にある日本キャタピラーD-Techセンターに若手女子が突撃してきました!今回は、実際にICT対応建機のデモンストレーションを行っている現場を体験後、思う存分、土木業界のICT化について語っていただきます。
座談会メンバー
1.いまだに根強い土木業界への「3K」のイメージ
1-1 土木業界のイメージについて
―河島
それでは皆さん、本日はよろしくお願いします。
まずは、土木業界のイメージについてお伺いしたいと思いますが、皆さんは、こちらに来られる前はどのような印象を持たれていましたか?
また、女性の目線から見て、気になる点はありましたか?
―やまとさん
私は正直クリーンなイメージはあまりありませんでした。大変そうで、きつい仕事・・・というイメージがありました。
―中村さん
ドラマの印象が強く残っていて、きつい仕事だけれどとても達成感のありそうな仕事だと思っていました。
大変そうなイメージは強いです。
―津曲さん
土木業界が、そこまでICTで発展しているイメージがもともとなかったので、現場の人が木を運んだり、大変そうなイメージでした。
よく3Kと言われる通り、きつい、汚い、危険なイメージでした。
―柴山さん
女性が働くという視点でいうと、産休や育休などの制度もあまりないイメージがあります。
―河島
確かに見た目に目が行きやすいですが、産休や育休などの制度は、特に女性ならでは気になる視点ですよね。
実際にそのようなイメージは強いですか?
―柴山さん
建築や土木というと男の人が多いので、あまりそういう制度がなさそうだなっていうイメージがあります。
逆に男の人が多いのに、そこで女性が働きやすい制度がある!という面を押し出せれば、興味を持つ人が増えるのではないかと思いました。
1-2 若手人材不足を解消するには?
―河島
土木業界では、29歳以下の労働者が全体の約10%と言われています。まさに私たちはその当事者にあたりますが、若年者雇用が厳しい業界は今後どのようしていけばいいと思いますか?
―やまとさん
ICTで操作がしやすく、誰でもできる作業というのが理解できました。誰にでもできるからこそ、安定した生活を担保しながら働きたい人にはとても向いているのではないかと思います。
―津曲さん
逆に、簡単で危険がないということなのでそこは担保できますよね。
―Renさん
建機の免許は、車の運転免許よりも取得時間も短くて、しかも操作も誰にでもできて、注意力も少なくて済みそうなので、ストレスなくできそうでした。女性からしたら「わかりやすい」という側面もポイントのひとつではないかと思います。簡単に誰でもできる、というところが良いと思いました。
―中村さん
あとは、例えば主婦として再就職する場合に、なかなか働き先がない場合もあると思います。
そこで、操作もわかりやすく資格などの取得も比較的容易であれば、働き先として候補に入りやすいのではと思いました。
CLOSE UP 河島コメント
女性の皆さんにご意見を伺ったところ、土木に対しするイメージとして「きつい」「大変そう」といった声が多く上がりました。しかし、ICT活用工事に対応した建機に触れることで、誰でも簡単に操作ができるなど、身近なイメージを持ってもらえることがわかりました。
建機の操作が簡単になった分、「人間がいらないのでは?」「私でなくてもいいのでは?」という意見もありましたが、建機に任せられるということは、私たち人間がより現場の安全向上に意識を向け、時間を別のことに使うことができるため、そこがICT化の大きなメリットの一つであると感じます。
また「3Kのイメージが強い業界で若年層や女性が働くには?」についても話し合っていただきました。まずは、親しみや興味を持ってもらう、自分でもできる!と思ってもらうことが建設業の課題と言われる人手不足、特に女性や若年層の取り込みに非常に大切だと皆さんの意見を聞いて感じました。
※3Kとは「きつい・汚い・危険」をまとめた総称。
旧来の業界のイメージでこう呼ばれることが多い。
昨今はICT活用による新3K「給料・休日・希望」をテーマに変革しようという国の動きもあります。
2.ICT建機・ドローン導入の計り知れないメリット
2-1 ICT建機のイメージについて
―河島
日本キャタピラーD-Techセンターでは「見て・乗って・学ぶ」ことをコンセプトとして、数々の建機を体験することができました。実際にデモの建機に触れた感想はどうでしたか?
―Renさん
元々(建機に)乗ってみたいというイメージはなかったのですが、乗ってみると清潔でした。女性から見た土木のイメージは、汚いとか大変そうというイメージがたくさんあるので、乗りたいと思う前に、そこが払拭できれば試しに乗ってみたい!と思う人も増えるのではないかなと思いました。
また、間近で作業をしているところをちゃんと見たことがあるか、というとそうでもありませんでした。間近にみると本当に迫力がありましたし、こういうことをするんだ、というのを改めて体験することができました。
―やまとさん
体力勝負で、身を危険に晒すシーンも多いのかなというイメージがとても強かったのですが、実際のICT建機を導入した現場を見ると、そうではないんだと思いました。
―津曲さん
確かに!危険なイメージが減りました。
―やまとさん
以前は、重いものを運んで、身を危険に晒しているというイメージがありました。工期に間に合わせるために、夜通し作業をしたり徹夜をしたりするというお話も聞いたのですが、そういうイメージも無くなりました。
―中村さん
今日のデモでは、建機が砂を運んだり、切り崩したり、という作業をしているところを見ることができたのですが、実際にその機材を使って具体的に何ができるかをもっと知ってみたいなと思いました。
―柴山さん
土木建設業界は、約100年ほど仕事の仕方が変わっていない部分もあると聞きました。
今日参加する前は、ずっと同じことをやって、肉体作業をして、というイメージがありました。しかし今日の体験では最先端の技術を使っているところが印象的でした。以前はいわゆる工事現場みたいなイメージがあったのですが、清潔な印象に変わりました。
CLOSE UP 河島コメント
皆さんが当初想像されていた土木・建設のイメージは、どちらかといえばネガティブなものでした。しかしICT建機のデモンストレーションを体験したあとは、皆さんの中のイメージがポジティブに大きく変化していました。コメントの変化を実際に聞いた私も、ICTだけで業界のイメージがこんなにも変わるのか、驚きました。
当然ですが、皆さんは普段から土木・建設に身近な接点がなく、ドラマや日常の工事風景などで見たイメージを持っていました。そのため、そもそも土木・建設へのイメージが薄かった、ということも要因でした。
しかし、ICT建機を実際に体験してみると、私たちが普段慣れ親しんでいるスマートフォンのようなタッチパネルで操作できるため、土木・建設が一気に身近に感じられたようでした。また、非常に簡単に操作できる点には驚きと新鮮さとともに「女性でもできる仕事」「私にもできる」という親近感も生まれたようです。4トンもの砂を積んだ建機を女性オペレーターが片手で操作されている場面が印象的でした。
2-2 ドローン導入について
―柴山さん
ドローンにはとても興味があります。1週間かかっていた作業が機械で15分で終わるのはとても効率化できていいと思うんですけど、その分雇用は減らないのでしょうか?今人手不足が深刻だから、どんどん効率化を図って仕事を速く少なく正確にできるようになったら、人手もいなくなるのでは?と最初は思いました。ただ、新しい仕事がどんどん出てくる社会だからこそ、逆に安定している土木業界で働きたい人も増えていくのではないかと思いました。
―Renさん
ドローンがやってくれることを、今までは人間がやっていた。
土木業界に興味はあるけど、苦手意識を持っていて踏み込めなかった人も、ドローンに関心がある人であれば「だったらやってみたいな」となるかもしれないですね。
―柴山さん
また、ICTやドローンなどの新しいものを柔軟に捉えていかないと、時代に置いていかれる気がします。元々人の手で計測すると1週間かかると聞きました。ドローンで行うと15分とのことですが、1週間の300分の1 になるということですよね。それを導入しないという理由があまり考えられないなと思いました。当然コスト面もありますが、経営的な側面でも、効率化できるという点が非常に魅力だと思いました。
―津曲さん
今、職人さん達の長年の感覚でできているから、そこはICTを導入しようとはならないのでしょうか。逆に若者との接点を増やすためには、ICT導入という接点を持つことは大切だと思いました。
ーRen
別の視点で見ると、全部自分で作業に取り組むのを失くすことにも有効だと思いました。よく「ロボットが仕事を奪うのか?」という議論もありますが、今までの作業で人でないとできないところや、地震などの自然災害が発生した時も考えると、ドローンを導入したほうがいいのではと思いました。危険も減るし、時間も短縮されますし。
―津曲さん
今働かれている上の世代の方々がICTを導入する構造を今から作っていかないと、潰れていく会社も出てくるのではないかなと思いました。特に若い世代がICTを利用していくことを考えると、今やっておくべきではないかなと思いました。
CLOSE UP 河島コメント
従来の測量では、専用の測量機器を用いて、地形や地物を地上から測定し図面化していました。上空から行う場合はヘリやセスナ機などが使われていました。それがドローンによる測量(UAV測量)技術の出現によって、これまでの作業時間とコストが大幅にカットされ、さらに収集する画像数と精度も格段に上がりました。さらに、大量の画像をSfMソフトを使って点群化することで、地形を簡単に3次元化できるようになりました。災害などで人間が立ち入れない場所もドローンなら危険がありません。
UAV測量で取得したデータをもとに作成されるのが3次元設計データです。これまで2次元の平面図で行われていた工事が3次元化されることによって、途中の確認や検査にかかっていた時間が短縮され精密さも増しました。
従来の建機ではオペレーターの腕と経験と感覚が頼りでした。万が一切りすぎてしまったり、掘り過ぎてしまうと元には戻せません。一方ICT建機は、3次元設計データを元にマシンガイダンスがオペレータをサポートし、マシンコントロールがマシンを自動制御します。そのため正確でミスがなく、作業効率が向上し工期短縮にもなるのが特徴です。
3.まとめ 結局、土木・建設にICTを導入するとどうなるのか?
―河島
それでは最後に、結局ICTを導入するとどうなるのか?また、その場合なぜ導入したほうがいいと感じられたかを教えてください。
―やまとさん
高齢化が進む中でICT導入をすることは、まさに3Kから新3Kヘの移行に必要だと思いました。体への負担や責任・周りの人のことも考えると、家族と過ごす時間も増えて、従業員の方々も幸せになれるのでは、と思いました。
―柴山さん
今後ICTを導入していくことは、これからも高齢化が進む中で、人材不足を解消する一手になると思います。若手人材採用や会社の存続のためにも、今制度を整えておく必要があると感じました。
―中村さん
今まで行っていた作業が無くなっているのではなくて、置き換えられているのだな、と思いました。ロボットが仕事を奪うのではなく、自分でやらなくてもいいことを任せるという視点で捉えると、もっと環境が整っていくのではないでしょうか。
―津曲さん
日本は地震や災害も多いし、その備えとしてもICT化しておくべきだと思いました。災害があればあるほど、人が入れないところが増えていくと思うので、ドローンの技術を持っている人がたくさん増えれば増えるほど、災害が起きた時に迅速に対応ができて、安全性につながると思うので、ぜひ導入してほしいと思います。
―Renさん
今まで職人さんの手でやってきたことは、大変だというイメージがありました。
時代の変化に伴って、若者自体の人口も減っている中で、受け継ごうと思う人も少なくなっていると思います。
その中でICTを取り入れることで、逆に若者も取っ掛かり易くなって、今後も受け継がれる仕事になるのではないか、と思いました。
CLOSE UP 河島コメント
「若手女子座談会企画」と題して5名の皆さんにICT導入によるメリットやデメリットを様々な視点から議論いただいた今回の企画。
特に意見として目立ったのは、「3K」から「新3K」への移行です。ICTを導入することで効率化を図った先にあるのは、若手人材の採用や、家族・従業員の幸せ。また、今後高齢化していく業界自体の構造の下支えにもなるために必要な要素であると、皆さんが口を揃えてコメントしていました。
また、ICTの導入で作業や情報処理のスピードが向上し、工事現場の効率UPが見込めます。
ICT導入とはすなわち、経営の効率化でもあると感じました。
日本では今後、道路や河川などの公共事業の需要がますます増えると言われています。地震大国でもあり災害も頻発する昨今の我が国において、土木・建設のICT活用は私たちの安心安全なくらしを支える重要な役割を担うと言えるでしょう。
日本の未来や社会を担うi-Construction。土木・建設業界は、i-Constructionが創造する未来を見据えた経営の在り方が問われています。
ICT活用工事に取り組まない土木・建設企業は、社会や業界の大きな波に飲み込まれ淘汰されていくのではないか、とさえ思います。
単なる最先端技術の導入や投資対効果という論点ではなく、中長期的な重要性とその可能性を理解し、社員やステークホルダーなど関係者全員がi-Constructionのメリットを享受できる経営を目指すことが土木建設業界に携わる企業に求められる経営の姿勢ではないでしょうか。
ICT活用工事に関する情報収集やICT建機に触れる機会をつくるなど、まずは一歩を踏み出し、検討していくことが重要だと感じました。
最後に
最後に、本企画にあたり、座談会にご参加いただいた皆様、関係各社の方々など様々な関係者様のご協力で遂行することができました。この場を借りて深く御礼申し上げます。
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