新年度を迎え、新たな環境に身を置かれる方も多いと思われる令和5年4月。そろそろ国土交通省から基準類の新規策定や改定に関する発表がある頃ですね。
今回のコラムは新たな年度になった直後ということで、昨年度(令和4年度)の建設業界を当社が注目した3つのワードをもとに振り返ってみようと思います。
建設ICT.comが注目する令和4年度の建設業界3つのワード
1.ICT小規模土工
平成28年度のICT土工を皮切りに、毎年ICTの新工種が拡大されてきました。
そして、令和4年度の目玉とも言えるのが「小規模土工」への工種拡大でした。
主な目的は、中小企業へのICT施工普及や、新たに追加された3次元計測技術のモバイル端末を用いた出来形管理手法の適用拡大です。
小規模土工とあわせて、管渠・暗渠・管路工なども適用拡大されました。
建設機械や測量機器、ソフトメーカーがこぞって「ICT小規模土工対応」と謳って営業活動していたので、年度初頭はこの言葉を目にする機会が多かったと思います。
全国的な取り組みの実績件数はまだ公開されていませんが、ICT小規模土工の導入にあたっての、いろいろな意見がまとめられた資料が発表されています。寄せられた意見に対する国土交通省の対応方針も明記されていますのでご参考ください。
※参考:国土交通省 第16回ICT導入協議会【資料-1】前回協議会及び業団体からの意見・要望及び対応方針
特に費用対効果に関する意見が多いように見受けます。
実態としては、まだまだ導入に踏み切れてない企業が多いのではないでしょうか。
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2.インフラ分野のDX
2018年に経済産業省により「DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート」が作成されて以降、業界問わず推進されてきたDXですが、国土交通省では「インフラ分野のDX」と銘打ち令和2年にインフラ分野のDX推進本部が立ち上げられました。
個別施策の目指す姿と工程等をとりまとめたアクションプランを策定、令和4年度は変革に果敢に取り組む「挑戦の年」と位置付け、推進されました。
本流である国土交通省に沿う形で、各地方整備局からも毎年度取り組み方針が発表されています。
各地方整備局のインフラ分野のDX情報
これまで推進されてきたi-ConstructionやICT施工といった取り組みも、このインフラ分野のDXに包括されるもので、内容も分野ごとに非常に具体的で各地整の組織編成を見ても、横断的に取り組もうという国土交通省の意志を感じるところです。
ちなみに、令和5年はDXの変革を一層加速させる「躍進の年」と位置付けられています。
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3.BIM/CIM
BIM/CIM原則適用は、まず令和3年度に大規模構造物の全ての詳細設計から始まり、令和5年度には小規模を除く全ての詳細設計・工事で原則適用拡大という流れで進んできました。
原則適用の具体的な内容の検討にあたっては、次のようなことが考慮されています。
- 「R5原則適用」後に小規模事業者が抵抗なくBIM/CIMを活用できるような仕組みを構築すること
- 前段階の業務成果の確実な引継ができること
- 工種毎に引き継ぐべき重要な入出力データ及び適用プログラムの電子データの引継ができること
- 原則適用に向けた課題解決とロードマップに示された将来的な発展に向けた検討は並行して取り組むこと
そして令和4年度末には具体化された原則適用の項目とあわせて、
- 今後は中小規模の企業を含め裾野を拡大
- 令和6年度からのより高度なデータ活用に向けた検討
- 紙からデジタル技術を前提とする効率的な制度への変革を目指す
と発表されました。
BIM/CIM関連の情報はこれからもますます目が離せませんね。
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令和5年度の注目ワード
令和5年度も引き続き、これら3つのワードには注目しつつ、このほかにも気になるワードをご紹介します。
- 「罰則付き時間外労働規制の適用」
- 改正労働基準法の施行により、土木・建設業などの一部事業や業務に与えられていた猶予期間が2024年3月末で終了。建設業においても罰則付きの時間外労働規制が適用されます。
- 「建設機械施工の自動化・自律化施工」
- 急速に進展するデジタル技術を活用し、建設施工の自動化・自律化及び遠隔化の開発と試験導入が進められています。(建設機械施工の自動化・自律化協議会)
- 「DS/Data-Sharing(発注者によるデータ共有)」
- BIM/CIM原則適用の一環として、受注者が希望する参考資料をインターネット経由で検索、受け渡しができ、発注者から速やかに貸与されます。
i-Construction取り組み発表時に掲げた「2025年までに建設現場の生産性2割向上」に向けたトピックスになり得る注目ワードです。
まとめ
施策や技術に関する新しい言葉が出てくる度に、現場は「また新しいことを覚えないといけないのか」と構えてしまうことでしょう。
自然を相手にした土木工事の現場で、日々奮闘されている方にとっては悩ましいですよね。
加えて、新しいことへのチャレンジで変化を求められ、これまでの概念を覆す必要性も出てくるとなると、いろいろな葛藤も生まれることでしょう。
そんな時は根本的かつ核になることに目を向けてみるのがおすすめです。
これまでの施策や今後の取り組みのほとんどは、i-Constructionの導入発表時から言われている課題を解決するためのものです。
最もシンプルでわかりやすい課題、それは「深刻化する人材不足」であり、その解決方法は「建設現場の安全性、生産性の向上」です。
そのための取り組みだと考えると、新しい言葉や概念、技術が受け入れやすくなり、毎日の現場を違う視点で捉えられるため、不思議と実行の道筋が見えてくるかもしれません。