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建設業者のためのよくわかる建設DX|今知っておきたい「デジタルトランスフォーメーションからインフラ分野のDXまで」を徹底解説!

頻繁に耳にするようになったデジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉。

わたしたちが関わる建設業界も例外ではなく、国土交通省は「インフラ分野のDX」を唱え、ここ数年で省内と地方整備局の組織体制は一気にDX推進に様変わりしました。

本コラムでは、改めてデジタルトランスフォーメーションとは何かを分析し、その本質を探るとともに、国土交通省が掲げる建設業におけるDX「インフラ分野のDX」について徹底解説します。

<本コラムでわかる3つのこと>

  • DXの本質とは何か
  • 国内のDX推進事情
  • 建設業者にとってのDXとは

DXの概念解説や、なぜ企業がDXを推進すべきかを説いた記事は多く存在しますが、建設ICT.comではDXの本質を理解したうえで、建設関連業者が具体的にどう対応していけばよいかを提唱したいと思います。

デジタルトランスフォーメーションとは?

デジタルトランスフォーメーションとは、「ICTの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という仮説です。

2004年にスウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマンにより提唱されました。一般的には「DX」と略して表記されることが多いため、本コラムでは以下「DX」とします。ストルターマンによると、DXには以下の特徴があります。

  • DXにより情報技術と現実が徐々に融合して結びついていく変化が起こる。
  • デジタルオブジェクトが物理的現実の基本的な素材になる。
    例えば、設計されたオブジェクトが、人間が自分の環境や行動の変化についてネットワークを介して知らせる能力を持つ。

デジタルトランスフォーメーション- Wikipedia

これが現在使われているDXという言葉が意味する原型となっています。

簡単に言うと、DXとは「現実世界とサイバー空間が、AI、IoT、データなどのデジタル媒体を通して途切れなくスムーズにつながること」です。

そうすることで、特定の分野、組織で部分最適化されていたシステムや制度が、社会全体にとって最適なものへと変化することになります。その結果、社会解決や新たな価値創造がもたらされ、生活をより良いものへと変革する可能性があるとされています。

デジタルトランスフォーメーションが必要な理由

ではなぜDXが必要なのでしょうか。一番の理由は人口減少時代の到来です。

人口が減少すると、国内の市場は縮小し労働力は減少します。人口減少が社会や経済に与えるマイナス影響は計り知れません。そのマイナス影響をICTの力で補おうというわけです。

DX推進の流れは「現実世界とサイバー空間の主従関係が逆転する」という強力なメッセージとも読み取れます。

少々突飛に聞こえるかもしれませんが、実際、2021年のバズワードである「メタバース」の出現からも社会が確実にその方向に歩んでいるのを感じられるのではないでしょうか。

※メタバース(Metaverse)
インターネット上に構成された3次元仮想空間のこと。仮想空間の中で人が3Dアバターとして存在し、他者と空間の共有、コミュニケーション、共同作業などができるのはもちろん、経済活動やもう一つの現実として新たな生活を送れることから、今後様々な関連技術やサービスが登場すると見込まれている。

この「人口減少によるマイナスの影響をICTで補うだけではなく、さらに豊かになろう」という発想がDXの原点であり、内閣府をはじめとする国内の関係省庁が各々で掲げるDX施策を読み解くうえで、わたしたち建設事業者も覚えておきたい基本的な考え方になります。

日本におけるデジタルトランスフォーメーション

当然のことですが、DXは建設業に限ったものではありません。

人口減少とデジタル化が進む我が国において、各省庁が大旗を振ってその根本的な社会構造の変化を確信的に推し進めています。

ここからは国内におけるDXの動きを見ていきましょう。

これが答え!内閣府が提唱する「Society5.0」

建設業に従事するわたしたちには耳慣れない「Society5.0」という言葉があります。

Society5.0とは、2016年1月に内閣府の「第5期科学技術基本計画」で閣議決定された日本が目指すべき未来社会の姿として提唱されたもので、次のように定義されています。

これまでの狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」
Society5.0 – 科学技術政策 – 内閣府

まさしく内閣府は冒頭に紹介した「現実と仮想のシームレス化」を目指しており、これが人口減少とデジタル化が進む我が国の最重要国家戦略のひとつになっているのです。

国内の各省庁が立てる施策は、この「Society5.0」戦略が中心であると言っても過言ではありません。

経済産業省のDXはレガシーシステムへの警笛

DXといえば経済産業省をイメージする人も多いでしょう。

経済産業省は、デジタル技術による社会の変革を当然のものとして、多くの日本企業が抱える老朽化・複雑化した既存システムがブラックボックス化し、企業のDX推進を阻害している点にフォーカスしています。

その対策として様々な研究やガイドラインが示されおり、そこから経済産業省の提唱するDXを読み解くことができます。

その1つは、経済産業省が2018年5月に「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」を設置し、同年12月に発表した「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」です。この中で経産省は、日本企業を対象にこのようにDXを説明しています。

(DXとは)企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)

このガイドラインの設置に先駆け、同年9月に発表された通称「DXレポート」の中では「2025年の崖」というキーワードを用いて、日本企業がDXを即座に進めなければならない理由が明記されています。

先に述べた「多くの日本企業が抱えるブラックボックスと化した既存システム」の問題解決ができない場合、DX実現は不可能となり2025年以降、年間で最大12兆円(現在の約3倍)もの経済損失が生じる可能性を「2025年の崖」という何ともショッキングな言葉で表現しているのです。

この「2025年」というキーワードにピンとくる建設業界の方々は多いのではないでしょうか。

では、いよいよ建設業のDXについて詳しく見ていきましょう。

建設業におけるデジタルトランスフォーメーション

建設業におけるDXは、2021年初の赤羽元国土交通大臣の会見が記憶に新しく、ここで初めてDXという言葉を知った業界関係者も多いのではないかと思います。
※ 「大臣会見:赤羽大臣会見要旨 – 国土交通省」

また、国土交通省に「インフラ分野DX推進本部」が設置されたのは2020年7月。

この時初めて「インフラ分野のDX」という言葉が登場しました。

その後の組織再編は驚くべきスピードで行われたと言えます。本省はもちろん、地方整備局まで一気にDX推進部が編成されました。

下図は関東地方整備局インフラDX推進体制の組織図の一例ですが、見事に体制が確立されています。

関東地整DX体制表
関東地方整備局インフラDX推進本部 設置要領より引用

インフラ分野のDX

国土交通省が掲げる「インフラ分野のDX」は、こう定義されています。

社会経済状況の激しい変化に対応し、インフラ分野においてもデータとデジタル技術を活用して、国民のニーズを基に ~社会資本や公共サービスを変革~ すると共に、 ~業務そのものや、組織、プロセス、建設業や国土交通省の文化・風土や働き方を変革~ し、インフラへの国民理解を促進すると共に、安全・安心で豊かな生活を実現すべく、省横断的に取組みを推進します。
国土交通省 インフラ分野におけるDXの推進について

国交書インフラ分野のDX
※国土交通省 「インフラ分野におけるDXの推進について」より引用

DX推進の背景として挙げられているのは、「将来の人手不足」「頻発する災害」「インフラ老朽化」など建設産業での課題です。

さらには、「技術革新」「新型コロナウィルス感染症による非接触・リモートの働き方」などの社会情勢の変化がDXの推進を後押ししています。

しかし建設産業は「屋外での作業、一品生産」という特性があるため、生産性向上は一朝一夕には難しいとも言えます。それでもDXに取り組むという並々ならぬ決意を感じます。

建設業界においてDXは、「i-Construction」に比べると後発の取り組みですが、実はi-Construction(ICT、BIM/CIM)の上位概念に位置すると考えます。

ICT施工やBIM/CIMはあくまでDXの一部に過ぎないということでしょう。

概念図

i-Constructionでは「2025年までに建設現場の生産性2割向上を目指す」、BIM/CIMでは「2023年度までに小規模工事を除くすべての公共工事で原則適用」というキーワードがあるのはご存知でしょう。

BIM/CIMに関しては、当初言われていた2025年度から2年前倒しされています。

経済産業省の掲げるDX施策のキーワード「2025年の崖」とマイルストーンが一致しているように見えるのは果たして偶然でしょうか。

建設業者がDXに取り組むためには

では、建設業者は一体どうやってDXに取り組んでいけばいいのでしょうか。

1.DXの根本的な目的を理解する

冒頭に述べた通り、DXの出発点は「ICTの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という仮説です。

関係省庁がここまで大々的にDXを掲げ、積極的かつ早急に推進しているのは、そう遠くない将来にICT社会を実現させることを目指しているからでしょう。

あらゆる施策の根本的な目的を理解すれば、大局的な視点を持つことができます。

今後、わたしたちの身近な仕事や生活において、実世界とバーチャルの境目がどんどん薄れていくことが予想されます。

日ごろ目にするニュースや取り組む仕事への視点が変わることで、これまでとは全く違う情報の捉え方になっていくでしょう。

2.日ごろから情報収集しDXの波に乗る

視点が変われば、集まる情報精度も高まります。

せっかく集めた良い情報を、自らの仕事や生活にどう取り入れれば良いかを検討材料として活かすことが大切です。

特に、国が推し進める施策や方針は、資料をよく見るとその目的やプロセスがしっかり書いてあることが多々あります。

ところが、その解釈が意外と難しいのです。

そういう時には本サイトのコラムやサービスを活用していただければと思います。

3.できることを見つけチャレンジする

前の項目で、ICT施工やBIM/CIMはあくまでDXの一部に過ぎないとお伝えしました。

言い換えれば、ICT施工やBIM/CIMへの取り組みがインフラ分野のDXに繋がるということになります。

発注方式によらず「受注したすべての工事でICT技術を導入する」といった心構えが重要です。

全工程でICT化が難しい場合や、ICT施工の経験すら無いこともあるでしょう。

しかし、事前に知識を身に着け、どの工程でICT化ができるのかをまずは検討し、できるだけチャレンジすることをお勧めします。

まとめ

国土交通省とは、社会資本や公共サービスなどのインフラ整備を司る省庁です。

国土の保全管理に関わる取り組みを通して、国民の生活や社会活動を支える役割を担っています。公共事業に携わる建設事業者も同じ役割があると言えます。

わたしたちも、今後の我が国の経済、社会活動における旗振り役がどのような指針を掲げ、どのようなプロセスを歩もうとしているかに注目するとともに、建設業者が様子見で終わってしまうことが無いよう、引き続き皆さんをサポートすることでその一役を担えればと思います。

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