発注者情報-i-Construction
発注者情報 ―i-Construction

i-Construction2.0とは?―3つの柱と目指す未来―

国土交通省が建設現場の生産性向上を目指して2016年からスタートさせたi-Construction。これまでにICT施工・測量・施工管理などの各分野において一定の効果が得られてきました。

しかしこの先、人口減少などが予想される中でも社会資本の整備・維持管理を持続させるために、さらなる抜本的な「省人化対策」が求められています。

このような状況を受けて2024年4月に発表されたのが「i-Construction2.0」の取組みです。
今回はこの「i-Construction2.0」について、その詳細や目標を整理します。

建設業界の状況と課題

建設業界の状況と課題

i-Construction2.0」を策定した背景として、国土交通省は以下のような状況・課題を挙げています。

1.生産年齢人口の減少や高齢化

2023年4月に国立社会保障・人口問題研究所が公表した「日本の将来推計人口(令和5年推計)」によると、2023年10月時点で1億2,435万人いる日本の総人口は2070年には9,000万人を割り込むと推計されています。

さらに高齢化も進んでおり、2020年に28.6%だった65歳以上の人口割合を示す高齢化率は、2070年には38.7%に上昇するとされています。

その中でも建設業は他産業に比べて55歳以上の占める割合が多く高齢化が進んでおり、将来の担い手不足が深刻視されている状況があります。

2.災害の激甚化・頻発化

日本では従来から地震等の災害に見舞われてきました。さらに近年では気候変動の影響による記録的な豪雨、土砂災害など新たな災害も多発しています。

建設産業には、インフラ整備や日常的な点検・維持管理により災害を予防することに加え、災害発生時の速やかな復旧・復興への取組みが求められます。

3.インフラの老朽化

高度経済成長期以降に整備されたインフラについて、建設から50年以上経過する施設の割合が加速度的に進行していくという状況もあります。
老朽化が進むこれらのインフラの計画的な維持管理・更新も、建設産業に求められる役割のひとつです。

4.DXの本格化

世界的にICT機器が普及し、AI・5G・クラウド等の技術の進化が進んでおり、これにより人々の生活や経済活動の在り方には大きな変化が生じています。

しかし建設産業においてはそれらの新技術等を活用しきれておらず、新技術やデータのさらなる活用による効率化が必要とされています。

建設現場のオートメーション化に向けた3つの柱

国土交通省は、これらの状況・課題に対処するために「i-Construction2.0」にて建設現場のオートメーション化を目指すとし、オートメーション化の3つの柱を提示しました。

建設現場のオートメーション化に向けた3つの柱
(参照 国土交通省「i-Construction2.0~建設現場のオートメーション化~」より抜粋)

1.施工のオートメーション化

1人当たりの生産能力の向上のため、各種センサーにより現場の情報を取得し、AIなどを活用して自動的に生成された施工計画に基づき、1人のオペレータが複数の建設機械の動作を管理する「施工のオートメーション化」を推進するとしています。

具体的には「自動施工の安全ルールの策定」「遠隔施工の普及促進」「ICT施工の原則化」などの取組みがあります。例えば、現在の「施工者希望型」は「発注者指定型」に移行していき、2025年度には直轄工事におけるICT施工の原則化を土工から開始するとされています。

これらの取組みのねらいは、現場の省人化に加え、生産年齢人口が減少しても必要な施工能力を確保していくことです。

2.データ連携のオートメーション化(デジタル化・ペーパーレス化)

建設生産プロセス全体のデジタル化・3次元化、BIM/CIMの活用などにより「データ連携のオートメーション化」を推進するとしています。
2023年度から原則適用が始まったBIM/CIMをさらに活用すべく、3次元モデルの標準化に向けた施行や、BIM/CIMをプラットフォームにしたデジタルデータの後行程への利用促進が予定されています。

さらに、現場作業に関わる部分のみならず、データ活用による書類の削減などバックオフィスの効率化も進めていくとのことです。

3.施工管理のオートメーション化(リモート化・オフサイト化)

部材製作、運搬、設置や監督・検査等のあらゆる場面で有用な新技術も積極的に活用しながら「施工管理のオートメーション化」を推進するとしています。

確認において既に活用されている遠隔臨場の検査への適用、ロボットによるリモート検査の検討、プレキャスト部材の活用などにより、リモート化・オフサイト化を進めるそうです。

また、大容量のデータのやり取りに必要な通信ネットワークを強化するため、日本全国で動画や3次元モデルなどの大容量データを円滑に利用できる環境の整備も行っていくとされています。

i-Construction2.0が目指す未来

i-Construction2.0を通して国土交通省は、「今よりも少ない人数で、安全に、できる限り屋内など快適な環境で働く、生産性の高い建設現場」の実現を目指しています。

i-Construction2.0が目指す未来
(参照 国土交通省「i-Construction2.0~建設現場のオートメーション化~」より抜粋)

1.省人化(生産性の向上)

建設業界には社会資本の整備・維持管理、安全・安心な国土の保全、経済活動の基盤となる施設整備といった国民サービスを持続的に提供していくことが求められます。これは人口が減少したとしても変わりません。

そこで、最低でも2040年度までに、建設現場において3割の省人化、すなわち生産性の1.5倍以上の向上を目指すとしています。

2.安全確保

建設業における死亡災害は他産業と比較しても多く、年間300人弱程度の死亡事故が発生しています。これらの事故の発生を完全に排除することは、建設現場に人がいる限り困難です。

そのため、建設機械の自動化や遠隔化により、人的被害を大幅に減らすことを目指しています。

3.働き方改革・新3K

建設業の若者離れを防ぐため、屋外や危険の伴う作業など厳しい環境で行う作業が多く、他産業と比較して労働時間が長いなどの状況を改善することが求められています。

そこで、リモート化・オフサイト化を進めることなどを通して、働く環境の大幅な改善を目指します。さらに「給与がよく、休暇が取れ、希望が持てる」建設業を「新3K」とし、若者が誇りとやりがいを感じることのできる建設業界を実現していくとしています。

さらにもう1つ国土交通省が進めている取組みとして「ICT施工のステージ2への移行」というものがあります。

ICT施工のステージ2への移行
(参照 国土交通省「ICT施工の普及拡大に向けた取組」より抜粋)

これは、現在の「工種単位」でICT化・効率化を進めるステージ1から、次のステージである「工事全体」での効率化を進める段階に移っていこうというものです。

ステージ2ではデータ分析・活用による効率化が目指されています。これは、i-Construction2.0で示された「建設現場のオートメーション化」を実現する手段とも共通するところです。

つまり、i-Construction2.0の取組みを進めることで、自然とステージ2へ移行していくともいえるでしょう。

まとめ

この先、人口減少は避けられません。そんな中でもいかに今までと同じ施工の水準を維持していくか。これに建設業界は対応していかなければなりません。
そしてその答えの1つが「i-Construction2.0」であり「建設現場のオートメーション化」です。

国土交通省は今、i-Construction2.0を進めるための環境整備を行っています。この先どんどん移行が進んでいくことになるでしょう。私たちは、今、分かっている情報をもとに準備をしていく必要があるのです。

これまで7年間取り組んできたi-Construction。その次の段階はもう示されました。

今やるべきことを考え、実行に移していくことが、生産性向上の一番の近道になるのではないでしょうか。

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