はじめに
2021年3月、国土交通省の令和3年度向け「ICTの全面的活用」を実施する上での技術基準類が新たに登録されました。
国土交通省webサイト「建設施工・建設機械」より
注目の改定ポイントとして、ICT対象工事の拡大、出来形管理要領の再編や新たな要領の策定があります。
日頃から出来形管理要領や監督・検査要領を穴が空くほど読んでいる私たちが、新年度の重要な改定ポイントを3つのコラムに分けてお伝えします。
第1回目は、ICT対象工事と工種の拡大です。
ICT対象工事の拡大
「ICT工事の発注が増えればやろうと思う」
「土量の多い、大きい工事しかICT対象にならないでしょ」
というICT工事の取り組みに消極的な企業の方の声を耳にします。
そんな方も、今回の変更を見ると、そうも言ってはいられないでしょう。
国土交通省から発注されるICT活用工事(土工)は、次の3つの方式に区分されています。
名前や多少の条件の違いはありますが、自治体発注の場合でも、これらの区分を準用されているケースがほとんどだと思います。
発注方式(土工) | 総合評価 | 工事成績 | 必要経費 |
---|---|---|---|
発注者指定型 | 加点対象外 | 加点評価 | 当初設計で計上 |
施工者希望Ⅰ型 | 加点評価 | 加点評価 | 変更計上 |
施工者希望Ⅱ型 | 加点対象外 | 加点評価 | 変更計上 |
今回の変更では、ICT土工の発注者指定型と施工者希望Ⅰ型の対象範囲が拡大されました。
変更ポイント① 発注者指定型の対象工事拡大
・工事予定価格 3億円以上 ⇒ 6千万円以上
・土工量 1万㎥以上
変更ポイント② 施工者希望Ⅰ型の対象工事拡大
・土工量 1万㎥以上 ⇒ 5千㎥以上
受注者からの提案・協議により3次元データを活用する施工者希望型とは違い、3次元データの活用が指定されているのが発注者指定型です。ICT活用工事は、やりたい企業、できる企業だけがやればいいというものではなくなっています。また、「大きい工事だけがICT対象だから、まだやらなくてもいいだろう」と悠長なことは言っていられない状況になりつつあります。
ICT対象工種の拡大
i-Constructionに関する工種についても、今年度から「ICT構造物工」「ICT路盤工」「ICT海上地盤改良工」の基準類が新たに策定されました。
平成28年には1種類だった対象工種が、5年後の令和3年度には12種類にまで拡大されています。令和4年度も新たな工種が追加予定になっており、今後も工種拡大の流れは継続していくでしょう。
まとめ
国土交通省のi-Constructionの取り組みは、小規模工事を除くすべての公共工事で原則BIM/CIM化という方針のもとで進められています。直近の入札公告を見ても、ICT対象工事はもちろんのこと、発注者指定型工事も増加しているのは明らかです。
国土交通省がi-Construction取り組み推進の手を止める気配は全く感じられない上、ICT工事は増えることはあっても減ることは無いようです。
多くの建設会社にとって、ICT工事への取り組みは必要不可欠になってきました。公共工事において、ICT対応できないと仕事が取れなくなるという可能性が高まりつつあります。その取り組みが早ければ早いほど、蓄積される実績とノウハウに厚みが増し、対応できる工事数も増え、新たな工種にも積極的にチャレンジできるようになります。
あなたの会社はICT工事にチャレンジできていますか?
次回「2021年度ICT出来形管理要領改定のポイント(その2)では、出来形管理要領の再編とその内容についてお伝えします。