基礎知識-3次元出来形管理
基礎知識 ―3次元出来形管理

2021年度国土交通省ICT出来形管理要領改定のポイント(その3)現場目線の気になる改定【ICT施工実務シリーズ⑨】

前回のコラムから期間が空いてしまい大変お待たせしました。

第3回目のテーマは現場目線の気になる改定です。

最終回となる今回のコラムでは、今年度のICT出来形管理要領改定項目の中から、私たちが特に現場目線で気になるものを4つピックアップしてお伝えします。

前回までのコラムをご覧になっていない方は、こちらからどうぞ。


ICT施工実務シリーズ⑦2021年度国土交通省ICT出来形管理要領改定のポイント(その1)ICT対象工事と工種の拡大【ICT施工実務シリーズ⑦】


ICT施工実務シリーズ⑧2021年度国土交通省ICT出来形管理要領改定のポイント(その2)出来形管理要領の再編【ICT施工実務シリーズ⑧】

1.斜め方向のUAV撮影による三次元測量

法面工と護岸工の工種で、急な法面に対してのドローン(UAV)の斜め方向の撮影が認められるようになりました。

従来のUAV測量では、機体から真下方向を撮影しますが、斜面が急な法面の場合、計測箇所が適切に写真に納まらない、高低差が大きいなどの理由で精度管理が難しいことがありました。

ドローンのカメラを法面に正対するように向けることで、計測箇所を均一の距離で撮影できるため計測精度の向上に繋がります。わたしたちも急な法面を計測する際には、地上型レーザースキャナーを使用するケースがありましたが、選択肢が増えたことで現場状況に応じた判断の幅を拡げることができています。

ICT施工の基準類の策定・改訂の取組
出典:国土交通省「【資料-2】ICT施工の基準類の策定・改訂の取組」より抜粋

2.施工履歴データを用いた出来形管理

施工履歴データを用いた出来形管理に「土工編」も追加されました。

日々使用するICT建機の施工履歴データを出来形管理に使用すれば、出来形測量を省略できます。

ただし、この運用を行う際には、施工日毎にTS等光波方式で3点以上を確認するという日常点検が必要になります。現場での作業が追加されることになるため、現場体制によっては生産性向上に繋がっているかどうかの判断が必要です。

また事前に、使用する建機のメーカーに「施工履歴データを用いた出来形管理」の対応ができるかどうかを確認しておく必要もあります。諸々の条件が整えば、現場の生産性向上やコスト削減が期待できます。

ICT施工の基準類の策定・改訂の取組
出典:国土交通省「【資料-2】ICT施工の基準類の策定・改訂の取組」より抜粋

3.ICT構造物工(橋脚・橋台)の3次元出来形管理(令和3年度試行)

ICT構造物工(橋脚・橋台)の3次元出来形管理が、適用に向けて令和3年度に試行されます。

構造物を面管理することで、これまでの出来形管理の効率化や維持管理への活用といった検証が行われます。

これが適用されれば、出来形管理や維持管理における安全性も格段に向上すると思われます。

ICT施工の基準類の策定・改訂の取組
出典:国土交通省「【資料-2】ICT施工の基準類の策定・改訂の取組」より抜粋

4.ICT施工の見積参考資料の策定

現状のICT施工では、「3次元起工測量」と「3次元設計データ作成」にかかる費用は見積対応になっています。

しかし、現場条件等により金額にバラツキが生じ、見積金額の妥当性の判断が困難との理由から、これまでの国の実績を基にした算定式を見積参考資料として整理されています。

原則、見積徴収としつつも現行から基準が改定となる可能性もあるため、今後の動きに注目したいところです。

ICT施工の基準類の策定・改訂の取組
出典:国土交通省「ICT施工の普及拡大に向けた取組」より抜粋

まとめ

ICT施工を行う上で、現場状況に応じた最適なICT技術の選定を行うことは、現場の生産性向上やコスト削減による利益確保に直結します。

それゆえに、国の定める基準をしっかり理解しておかないと、現場状況にあった適切な判断はできません。

国土交通省は、現場からの声を取り入れながら、来年度以降も様々な要領策定や改定を検討しています。今年度内にも新たな基準類が発表される可能性もあります。

わたしたちも、日頃から最新の基準類や要領を把握し読み解き、引き続き建設会社様のサポートに尽力いたします。

今年度の出来形管理の改定についてのコラムを3回にわたってお届けしました。

日々、現場対応が忙しくて最新のICT管理要領の内容の把握が難しい方も多くいらっしゃると思います。少しでもそんな皆さんのご参考になれば幸いです。

本コラム中では取り上げられなかった項目も多数ありますので、詳細は国土交通省のwebサイト(建設施工・建設機械「ICTの全面的な活用」)をご確認ください。

1つでも多くの現場が、ICT技術を取り入れることで安全性と生産性を向上させ魅力ある建設現場になることを願っています。そのために、わたしたちは「ICT施工に強くなる」情報をこれからもどんどん発信していきます。

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