ICT技術-GNSS・TS
ICT技術 ―GNSS・TS

ICT施工の幅が広がる!「杭ナビショベル」デモンストレーション見学レポート

こんにちは。建設ICT.comの川口です。

今回は、ICT施工をもっと身近に取り入れ普段使いができるシステムとして注目されているICT施工機器「杭ナビショベル」のデモンストレーション見学のレポートです。

ICT施工は大規模工事でないとメリットがないと思われがちなため、中小規模のICT工事へのシステム導入のハードルを下げる手段の一つとして検討されている方も多いのではないでしょうか。今回のコラムが、そんな方々のご参考になればと思います。

はじめに

今回のデモンストレーション見学会は、ICT施工経験豊富な森下建設株式会社が開催したものでした。

森下建設開催のデモンストレーション見学会

すでにICTバックホウを2台所有している森下建設さんは、ICT発注かどうかは問わずすべての現場でICT化を目標に、ICT施工に積極的に取り組んできた建設会社です。

ICT施工の良さを充分理解しているがゆえに、まずはICT建機導入を前提に現場に入る監督さんばかり。工事規模を理由にICT施工を諦めることは少ない建設会社です。

ただし、そんな森下建設さんでもすべての現場にICT建機が導入できるわけではありません。GNSSの受信状況、作業範囲によっては、従来機で対応せざるを得ない場合もあります。

他にも、導入したいのはやまやまだけれど、コストが見合わない(=レンタル費が高い)といった理由でICT建機導入を諦めざるを得なかった方々もいらっしゃるのではないでしょうか。

このような背景もあり、杭ナビショベルに興味を持つ建設会社は、森下建設さんのように、GNSSとTSといった計測技術の違うICT建機を増やして対応工事の領域をひろげたい、小回りの利くICT建機で施工の作業効率をあげたい会社や、ICT建機導入のコストを下げてもっとICT施工実績を作りたい会社が多い印象があります。

杭ナビショベルとは

杭ナビショベルとは、トプコン製のトータルステーション杭ナビ(LN-150)をマシンガイダンスシステムのセンサーとして利用するICT建機システムです。

杭ナビショベル(システム構成イメージ)

建機のメーカー、サイズを問わず、様々な油圧ショベルに全周プリズムやセンサー、必要な機器を後付けしてICT建機システムを利用することができます。

メリットと留意点

この日はメーカー取扱店の担当者から機器の取扱い、設定方法など、実機を使った説明とデモンストレーションがありました。

「あの現場で使えるか」
「この現場ならこう使おうか」
と、森下建設の皆さんと一緒に実際の現場でどう使うかをイメージしながら説明を聞いていました。

デモンストレーションを受けた時点で感じたメリットと留意点です。
現場目線の率直な意見としてご参考ください。

メリット

  • 3次元データを活用したマシンガイダンス施工で丁張レス施工や品質向上が可能になる
  • GNSS受信が難しい山間地域やトンネル内などで作業ができる
  • GNSS位置計測システムで必要なローカライゼーション作業が不要
  • 小型建機に取り付けられるため、小規模工事でのICT建機導入がしやすい

留意点

  • トータルステーションの視通ができない雨天や荒天時、砂埃がある現場では作業ができない
  • 杭ナビ1台に対してICT建機1台のセットで作業を行う必要がある
  • ICT建機を旋回する毎にキャリブレーションが必要
重機オペレーターの反応

重機オペレーターの反応

ICT施工の経験豊富なオペレーターが熟練から若手まで所属している森下建設さん。早速、感想を聞いてみました。

■熟練オペレーターAさん
「旋回のたびにキャリブレーションが必要だから、法面整形作業の時は工夫しなきゃいけないね。だとしても、丁張がいらなくなることを考えれば施工性は上がるよね」

■熟練オペレーターBさん
「GNSSだと衛星電波の受信状況が良くないと、現場によっては回復まで作業を止めることがあるんだけど、これだと電波状況に左右されないからいいね」

■若手オペレーターCさん
「山切りはベテランじゃないと難しいと言われるけど、3次元データを見ながら施工できるからICT建機は自分たちでもチャレンジできるからいいよね」

国土交通省の取り組み

今回の見学会開催決定の時期と同じく、国土交通省が令和3年8月にICT普及促進ワーキンググループを設立しました。
このワーキンググループは、ICT施工の普及の課題である小規模現場でのICT対応を検討するためのものです。

そこで令和3年度の取り組みが議論された結果、小規模ICT施工技術の現場試行が開始することになっています。その技術の一つがトプコンの「杭ナビショベル」です。そのほか、コマツの後付バックホウ3Dガイダンスシステム「SMART CONSTRUCTION Retrofit」、OPTiMのスマホやタブレットで誰でも簡単に高精度3次元測量ができる「Geo Scan」があります。

10月に開催予定の第2回ワーキンググループでは、国土技術政策総合研究所(国総研)の建設DX実験フィールドでこれら新技術の現場試行が実施される予定になっています。

このように小規模現場でのICT対応に向けて、国土交通省の積極的な取り組みが見られる中、同じく現場でも様々な観点から比較検討を行う必要性を感じます。

まとめ

今回の見学会では、GNSSもTSもどちらの測位システムも特徴があり、それらをよく理解して、現場にあわせたICT技術を選択することの必要性を改めて感じました。また、必要な機器を後付けすれば、手持ちの建機や小回りの利く小型建機をマシンガイダンス仕様にできるのは、現場にとって非常に魅力的です。

小規模現場でのICT対応が、ICT施工普及の課題の一つであることは間違いありません。ICT施工へのハードルを少しでも下げたいという国土交通省の意向も感じます。

こういった国土交通省の動きとあわせて、新しいICT技術の導入、その技術の有効活用など、現場での創意工夫が更なるi-Constructionの取り組み推進に繋がることを期待します。

わたしたちも引き続き、建設ICT化に積極的に取り組み、様々な形で皆さんをサポートいたします。ICT施工に関するサポート内容について、ご不明点がある方はお気軽にお問合せください。

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