はじめに
ICT活用工事での精度確認シリーズ第4回目は、「キャリブレーション」についてお伝えします。
ひとことでキャリブレーションと言っても様々なものがありますが、今回はICT活用工事で行う主なキャリブレーションを3つ取り上げます。
ICT活用工事での精度確認シリーズのその他のコラムはこちらからご覧ください。
【ICT活用工事での精度確認①】地上型レーザースキャナーの精度確認試験とは
【ICT活用工事での精度確認②】ICT建機の精度確認とは
【ICT活用工事での精度確認③】ドローン測量の精度確認とは
目次
「キャリブレーション」には色々ある
わたしがICT施工に携わるようになり、最初に「キャリブレーション」という言葉を聞いたのは、ドローン測量の技能習得をしている時でした。
言葉の意味としては、「較正、校正、調整」ということになりますが、その対象物によって色々なキャリブレーションが存在します。
本コラムでは、それぞれのキャリブレーションの意味と具体的な方法など、ICT活用工事で行う際の事例を挙げて説明したいと思います。
その1.ドローンの「キャリブレーション」
ドローンの機能と運用管理
ICT活用工事では、3次元測量や現場管理の空撮などでドローンがよく使われています。
ドローンにはモーターやプロペラ、GPS、センサー、制御装置などが装備されており、特に本体内部にある回転を計測するジャイロセンサーや傾きを計測する加速度センサー、高度を計測する気圧センサーなどは重要な機能の一つです。
ドローンの飛行において何よりも注意しなくてはならないのは、墜落事故等のリスクを最大限に抑えることです。そのためには、ドローンの機能を理解し、日頃から徹底した運用管理を行うことが重要です。その一つが「キャリブレーション」になります。
キャリブレーション方法
まず、飛行前のチェックの際にプロポと機体を起動させると、各々のファームウェアがアップデートのチェックなどを始めます。この動作中に「キャリブレーションをしてください」といったメッセージが出ることがあります。
前述の通り、ドローンには様々なセンサーや制御装置があるため、それらが正常に機能していない場合には、校正や調整を行う必要があります。特に、方位を計測するためのコンパスのキャリブレーションが最も多いのではないでしょうか。
では、DJI製のドローンを例に、コンパスキャリブレーションの方法をご説明しましょう。
- ドローンを上向きにして、体の正面で水平に左右の手で持って立ち、その場で360°回転します。
- ドローンを縦向きにして、体の正面で持って立ち、その場で回転します。
プロポ画面の指示通りに動き、正常に機能すると判断されればキャリブレーション完了となります。
その2.空中写真測量の「カメラキャリブレーション」
次のキャリブレーションもドローンに関するものです。
もともとは写真測量で行うもので、目的は民生用のカメラを写真測量用として使用するために、レンズの焦点距離、レンズの中心位置のズレやレンズの歪みなどを正確に把握し、補正係数を算出し測量用として使用するためです。
ICT活用工事でこの作業が必要となるのは、「無人航空機(ドローン)を用いた空中写真測量」を行う時になります。
写真測量ソフトのセルフキャリブレーション
従来のカメラキャリブレーションは専用の機器や設備を使用して行うものでしたが、国土交通省の出来形管理要領には写真測量ソフトウェアの処理中に行うセルフキャリブレーションで良いとされています。
ドローンで撮影した写真を3次元点群に変換する処理中、使用したカメラの歪みを計算し、撮影した写真に対して補正を行うという作業になります。以下に写真測量ソフトウェアの「MetaShape」で行ったセルフキャリブレーションの事例を載せておきます。
その3.ICT建機の「キャリブレーション」
事例の3つ目は、ICT建機のキャリブレーションです。
冒頭でお伝えしたようにキャリブレーションという言葉の意味が「較正、校正、調整」ではあるのですが、作業を行う状況によって多少ニュアンスが異なる印象を受けます。
なかでも、ICT建機にまつわるキャリブレーションでは、その違いが顕著です。
整備や修理もキャリブレーション
建設機械の運用においてキャリブレーションという言葉を広義でとらえれば、日々の施工で問題なく建機が稼働するためには必要なこととして、整備や修理もそれに該当すると思います。
ICT施工で行うキャリブレーション
では、ICT施工という狭義の意味で行うキャリブレーションを挙げてみようと思います。
- 現場導入前のキャリブレーション
メーカーやレンタル業者が行う納品前の作業 - 精度確認試験前後のキャリブレーション
バックホウに取り付けたバケットなどの設定や調整 - 測位システムのキャリブレーション
自動追尾TSやGNSSといった測位システムの設定や調整
施工精度を左右するキャリブレーション
キャリブレーションを行った後、適正な精度が出ているのであれば施工を進めて良いことになります。
施工途中で精度が出なくなった場合、その原因がキャリブレーションで解消することもあります。もちろん、キャリブレーションの必要なく解消することもあります。
要は、具体的な原因追求と対処方法の選択には、あらゆる要素の勘案と原因の見当、検証が必要であり、そのためには「キャリブレーション」は無くてはならない作業なのです。
施工精度を高めるためには、キャリブレーションだけではなく、日頃のICT建機の稼働状況の把握や施工進捗、3次元データを含めたICT施工工程に関する様々な知識が必要になってきます。
まとめ
ICT活用工事に関する「キャリブレーション」には、色々な作業があることはお分かりいただけたかと思います。このコラムを通して皆さんの理解が少しでも深まれば幸いです。
ICTに関わらず、新技術の導入には新しい用語や概念を理解することから始まるため、大変なことが多いと思います。
今後もわたし自身が現場で対応した事例を通して、皆さんがよりICT施工に対する理解を深められるよう、日頃の業務に役立つ情報を発信していきたいと思います。