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業界の動向把握と人材育成のポイント①【情報に隠された国土交通省からのメッセージ】

国土交通省から日々発信されるたくさんの情報。皆様はそれらをしっかりとチェックできているでしょうか。

日々それぞれの現場で活躍される建設業界の皆様にとって、その全てを把握することは難しいと感じられるかもしれません。
しかしそこには、これからの建設業界の道筋を示す重要なヒントが隠れていることも少なくないのです。

そこでこれから2回にわたり、情報をもとに業界の動向を把握し、さらにそれを踏まえて人材育成を行っていくときのポイントをご紹介します。

まず今回のコラムでは、現時点で発表されている情報から私たちが読み取った「国土交通省からのメッセージ」を解説していきます。

令和5年度ICT活用工事積算要領から分かること

国土交通省から発表されるたくさんの基準・要領等。
その中でわたしたちが必ずおさえておいてほしいと思っているのが「実施要領」「積算要領」「出来形管理要領」の3つです。

これらの要領は毎年度変更が加えられるため、逐一情報を追っていく必要があります。特に「積算要領」はお金に関するルールを定めているものであり、会社の利益などにも直接関わってくるため、変更を見逃していると大変なことになってしまいます。

補正係数による算出金額と見積りとを比較
※参照 国土交通省 参考資料「令和5年度 国土交通省 土木工事・業務の積算基準等の改定」より一部抜粋して掲載

こちらは、令和5年度の積算基準の運用に関する資料です。

見ていただくと、同じ「測量業務」であっても段階によって積算方法が異なってくることが分かるのではないでしょうか。
例えばドローンを用いて測量を行う場合、起工測量は「①3次元起工測量」にあたるため積上げ式ですが、出来形測量の場合は「④3次元出来形管理」にあたり補正係数による算出になるのです。

このような細かいルールを、積算担当のみならず、現場代理人なども理解していること。
大変ではありますが、これがとても大切になってきます。

さて、ここで登場した「補正係数」。
これについては近年変更が繰り返されており、令和5年度には、より実態に即した積算となるように運用していくという方針に変更となりました。

補正係数による積算の場合、取扱数量に1.2または1.1を乗じた額で費用が算出され、大きい現場であればあるほど費用の額も大きく算出される場合が多くなります。
現場規模や会社の利益等との兼ね合いで、見積りと補正係数により算出される費用の額に乖離が生じていることがありました。

このような状況を受けて、令和5年度から「より実態に即した積算となるよう、当面、補正係数により算出される金額と見積りとを比較し、適切に費用を計上する運用とする」と明記されたのです。

この変更から分かるのは、「いつまでも同じ条件で費用が出るとは限らない」ということです。現状ICT活用工事に取り組むことでみてもらえていた経費も、ICTが標準化されていくにつれてみてもらえなくなるということも十分に考えられます。

令和6年度の積算要領を確認する際には、「見積りを精査していくという流れがある」ということをひとつの視点として持ちながら読み解いてみることをおすすめします。

ポイントをおさえた発注者協議

「そんなことを言われても、費用が出ないと工事ができないじゃないか」
なんていう声が聞こえてきそうですね。そう思われるのも当然です。

そこでわたしたちは、ポイントをおさえた発注者協議の重要性を訴えたいのです。

「なぜこれだけの予算が必要なのか」これを、しっかり伝えることができれば予算がおりる可能性は十分にあります。
実際にわたしたちがサポートした企業様には、ICT対象でない工事についても発注者協議を通して費用をみてもらえたことがあります。

実は、発注者側も実績を求めているのです。
インフラ整備は国にとって必要不可欠な事業です。それに対応できる建設会社も必要です。
そして今後ICT活用工事が標準化していく今においては、ICTを活用して対応できる業者に大きな需要があります。

先日とある発注者様から依頼を受けて講師を務めたセミナーにおいて、発注者側から「積極的に協議をしてほしい」という旨の発言がありました。
発注者からこのような言葉を聞くことはまずなかったため驚きましたが、それだけ「今」ICT活用工事に取り組んでほしいんだ、という強いメッセージを感じました。

「工事単位」での効率化に動き出す!?

国土交通省が進めている大きな動きをもうひとつご紹介します。
それは「3段階で現場を効率化していく」というものです。

ICT施工は次の段階へ
※参照 国土交通省 第16回ICT導入協議会【資料-3】 より一部抜粋して掲載

現在、建設業界全体としてはステージ1の工種単位でICTに取り組もうという段階です。
しかし2024年1月、ICTによって工事単位で効率化するというステージ2への移行に動き出すという報道がありました。

ステージ2に移行するとはどういうことか。
ステージ2では「できる工種から」ではなく全工程においてICTを利用し、さらにデータの活用による効率化を図るところまで求められます。
工期や予算もこれらができることを前提に組まれていくことになるでしょう。

このようにステージが上がるほど、ICT活用工事に挑戦することのハードルもどんどん上がっていってしまいます。
このことからも「今」ICT活用工事に取り組むことの重要性が分かるのではないでしょうか。

まとめ

今回のコラムでお伝えしたかったのは、以下の3点です。

  • より実態に即した積算となるように見積りを精査していくという流れがある
  • ポイントをおさえた発注者協議を行っていくことの必要性
  • 「ステージ2:工事単位での効率化」へ移行する動きがある

ここまで読んで、「今ICTに取り組まなければ」と感じてくださった方がいれば幸いです。

国土交通省はどんどん前に進もうとしています。これからの建設業界で生き残っていくためには、この国土交通省の動きに置いていかれずに一緒に進んでいくことが求められます。
そのためにICTを始めるには、今がラストチャンスです。

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さて、今回の内容を踏まえ、次回は「ICT人材の育成」のポイントについて解説します。ぜひこちらもご覧ください。

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