2026年(令和8年)2月25日、国土交通省にて「第22回 ICT導入協議会」が開催されました。さらに3月末には、この協議会での議論を反映した「令和8年度版 ICT基準類・要領」が正式に発表されました。
毎年この時期に発表されるこれら一連の資料は、次年度の戦略を占う上で欠かせないバイブルです。
今回示された令和8年度の方針は、これまでの試行錯誤を経て、建設業界が「i-Construction 2.0」という新次元の社会実装へと本格的に踏み出すことを決定づける内容となっています。
本コラムでは、最新の基準類や要領に基づき、令和8年度の国土交通省ICT方針の全体像を網羅的に解説します。
今後の落札率を左右する「Stage II」の加点措置から、中小企業のDXを強力に後押しする「導入型ICT」まで、今すぐ知っておくべき最重要ポイントを整理しました。
それでは早速解説していきます。
目次
1. 舗装工・地盤改良工も「原則化」の拡大対象に
令和7年度の土工・河川浚渫の原則化に続き、令和8年度からは舗装工および地盤改良工においても「発注者指定型(原則化)」が導入・拡大されました。
ICT舗装工
令和6年度の時点でICT実施率が約75%まで上昇しており、今年度から原則化の適用範囲が、施工対象範囲10,000㎡以上に拡大されました。
ICT地盤改良工
令和6年度の時点でICT活用工事の実施工率が86%に達しており、改良位置のガイダンスや施工履歴、データの活用が効率的に大きく寄与することから、全面的に原則化(発注者指定型の導入)が適用されました。

2. ICT施工Stage IIが「総合評価加点対象」へ:施工管理DXの本格始動
今回の基準類改定で注目すべきは、ICT施工Stage II(施工データの活用)が、令和8年度から「総合評価加点対象」への格上げが示されたことです。
ターゲットは「現場全体の施工管理」
従来のStage Iが重機や作業員の物理的効率化を目的としていたのに対し、Stage IIは「施工管理(現場監督)の業務プロセス全体」のデジタル化をターゲットにしています。
ICT施工 Stage IとStage IIの比較
| Stage I | Stage II | |
|---|---|---|
| ターゲット | 現場の各作業(重機・計測機器) | 現場の施工管理(現場監督) |
| 内容 | ドローン測量や3D設計データ作成、ICT建機施工(バックホウ等)などにより、各施工プロセスを高度化する。 | クラウドシステム、スマートフォン、IoT機器などを使って、建設現場のあらゆるデータを一元管理・共有する。 |
| 目的 | 丁張り設置や手元作業員配置等を減らし、生産性向上(施工の効率化・省人化)を図る。 | 各種データをリアルタイムに活用することで、監督業務(書類や移動時間)の負担を軽減し、建設現場の全体最適化を図る。 |
現場監督(施工管理者)の業務負担軽減
建設現場の全体最適化とともに、クラウドやIoTなどのITツールを有効活用してDXを推進します。
これにより、書類業務や移動時間を削減し、現場監督の働き方改革の実現を加速させていくことができます。
戦略的価値
令和8年度以降、工事の特記仕様書にStage IIの実施条件が加味される可能性が極めて高く、他社に先駆けて今から対応実績を積んでおくことが、総合評価での優位性を保り、落札率向上に直結する最大の武器となります。


3. 中小企業のDXを加速させる強力な後押し 「導入型ICT活用工事」の新設
「3次元データ作成のハードルが高い」と導入を見送っていた企業向けに、より簡易的な技術からスタートできる「導入型ICT活用工事」の整備方針が示されました。
- 2次元マシンガイダンス(2D-MG): 複雑な3Dデータの代わりに、基準となる高さからの深さをモニターで確認できる簡易システムにより、複雑な3次元設計データは一切不要で、オペレーター1人のみ(ワンオペ)での施工が実施可能です。
- 人工54%削減の実証効果: 小規模な管路掘削の事例において、2D-MGの活用により従来工法に比べてのべ人工を約54%削減できた確かな実績が報告されています。
- 後付けICT建機システムの活用: 高価な新車のICT建機を購入せずとも、既存の自社建機にセンサーを後付けするだけで、手元作業員を劇的に減らすことが可能です。
地方自治体の小規模工事でもメリットを実感しやすく、まずはここからICTの利便性に触れ、将来的なステップアップを目指すための最適な「入門編」となります。

4. 次世代施工の核となる「フィジカルAI」と「チルトローテータ」
国交省は、AIが建機やロボットという物理的な肉体を持って自律的に動く「フィジカルAI」の活用推進に向けた検討を本格化させています。
「自ら見て理解する」建機
従来のICT建機では、オペレーター自身が3次元データを基に判断を下し、施工を進めるものでした。
一方、フィジカルAI搭載建機は、カメラやLiDARで取得した現場情報をAI自らが解析し、土の硬さに合わせた角度調整など、リアルタイムに最適な自律判断を行うことを目指しています。
チルトローテータの普及
省人化効果が顕著なチルトローテータについても、試行対象工種が順次拡大されます。
狭小現場で手元作業員を100%削減した事例も報告されており、次世代施工の必須装備となりつつあります。
そして、このフィジカルAIを正確に動かすための「地図」となるのが3次元データ(BIM/CIM)です。来るべき完全自動施工の波に乗るためには、
「今から、質の高い3次元データを現場でつかいこなす体制」を構築しておくことが、企業としての生存戦略に直結します。

まとめ:変化を「加点」と「利益」に変えるために
令和8年度の方針を一言で言えば、「ICTを使えるのは当たり前。Stage II 現場全体の最適化で高みを目指していく。」フェーズに入ったと言えます。
目まぐるしい変化のスピードに戸惑うこともあるかもしれませんが、今回の「導入型」のように、現場ハードルを下げてくれる施策も増えています。
まずは自社のできる一歩からスタートし、最新のルールを味方につけていきましょう。
最後に、今年度からICT土工に加えて、舗装工・地盤改良工も原則適用となりました。
今後、あらゆる工種でICTが「スタンダード」になることは確実です。そして将来、ICT関連の補助金や優遇措置が縮小された時、最後まで生き残れるのは「ICT技術を内製化し、自律的に利益を出せる企業」だけです。
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ICT施工の内製化が利益を生む理由|2026年原則化へ向けた建設業の生存戦略
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参考文献
- 第22回ICT導入協議会(令和8年2月25日開催) 会議資料
建設施工・建設機械:ICT導入協議会 – 国土交通省 - 国交省R8年度基準類 要領関係等(ICTの全面的な活用)
建設施工・建設機械:要領関係等(ICTの全面的な活用) – 国土交通省 - BIM/CIMに関する基準・要領等(最新版)
https://www.mlit.go.jp/tec/tec_tk_000037.html

















