今さら聞けないRTK-GNSS
建設ICT.comがわかりやすく解説するICT施工ワンポイント講座。第1回目は「RTK-GNSS」についてです。
「RTKって何?VRSと何が違うの?」といった、今さら聞けない基礎知識をわかりやすく解説します。
ICT施工現場の位置計測方法をどうするのかを判断される際にお役立てください。
はじめに
今回のICT施工ワンポイント講座は、今日のテーマはこちら「RTK-GNSS について」をお届けしたいと思います。
まず「RTKって何?」「VRSって何?」こういったところをお伝えしていきたいと思います。いきなりの専門用語になります。
「RTK-GNSS」が正式な名前ですが、現場の皆さんにとっては「RTK-VRS」という言い方の方が耳馴染みがいい言葉なのではと思います。結論からお伝えしますと、「RTK-GNSS」というのは人工衛星を使った位置計測方法の種類の一つの名前になります。
これがICT施工ではどういったことに関係してくるのかっていうのをこの動画で解説していきたいと思います。
GNSSとは
まず「GNSSって何?」いうところですけれども、こちらは「グローバルナビゲーションサテライトシステム」の略語になります。日本語で言いますと「全地球候補衛星システム」になります。
GPSといった方が皆様ご理解いただける方が多いのではないでしょうか。
GPSというのはアメリカ製の人工衛星の名前になります。
ロシア製の人工衛星はGLONASS。
EU(ヨーロッパ連合)の人工衛星はガリレオ。
我が国、日本の人工衛星を準天頂衛星システムは愛称「みちびき」ですね。
その総称がGNSSというものになります。人工衛星のことを指します。
実はこれは豆情報なんですけれども、今、「みちびきは」2018年11月から日本上空を4基飛んでいる状態になっています。こういった人工衛星を使って位置情報を計測するものを「RTK-GNSS」というのですが、では実際ICT施工でなに使われるのか?
こちらはズバリICT建設機械の機能である「マシンコントロール・マシンガイダンス(MC/MG)」を利用するためです。
この「マシンコントロール・マシンガイダンス(MC/MG)」についてはまた改めて別の動画で解説をしたいと思いますので、お楽しみにしていただきたいと思います。今回は GNSSについての内容をこのままお伝えします。
このマシンコントロール・マシンガイダンスは、国土交通省近畿地方整備局の手引書を用いてご説明したいと思います。
分かりやすい画像がありましたので引用させて頂いておりますが、ご覧になりたい方は概要欄のリンクをご覧下さい。
>国土交通省 近畿地方整備局 「マシンコントロール/マシンガイダンス技術の手引書【施工者用】」
ICT施工でICT建機を計測する方法は大きく2種類あります。
1つ目は自動追尾式トータルステーション(TS)を使ったICT建機な位置計測方法。2つ目は右側にありますRTK−GNSSを用いた位置計測方法です。
このトータルステーションの方は皆さんに非常によくイメージしていただきやすいかと思います。実際に測量で使用するトータルステーションと同じようなイメージですね。
基準局(既知点=もともと座標がわかっている点)の上に、基準となる基地局を設置し、受信機ターゲットに関してはICT建機に設置します。それを常に追尾した状態で位置情報を計測しながらICT施工を行う、という方法になります。
もう一つ、もともとわかっている基準点に基地局を置くという方法は一緒なんですけれども、位置情報を計測するのに人工衛星を使うのがRTK-GNSSになります。
同じくICT建機にはターゲットではなく受信機を設置することによって常に位置情報を計測しながら施工することができる。大きくこの2つの種類になります。
これを計測をすることによって、マシンコントロール・マシンガイダンス(MC/MG)機能が使えるということです。
位置情報を計測するだけではもちろん使えません。3次元データの設計データなどのデジタルデータをICT建機に取り込むことによって、ICT建機が設計データと現況位置のデータとの差分に基づいて「あとどれぐらい掘ればいいのかとか」とか「どれぐらい盛ればいいのか」を自動制御、操作補助をしてくれるのが、マシンコントロール・マシンガイダンス(MC/MG)になります。
GNSSで計測する仕組み
では実際にGNSSがどうやって計測しているのかを説明します。
このGNSSの計測方法も大きく2種類に分かれます。単独測位と相対測位という方法です。
両方とも4個以上の衛星を受信することで計測することができます。まず地上に置いてあるアンテナで衛星からの電波を受信します。その衛星電波の発信と到達の時間を計って距離を計算するという方法になります。
単独測位に関しては測位エリアが全世界になります。主には船舶、飛行機、あと我々になじみが深いのがカーナビです。自動車部などのナビゲーションシステムがこの単独測位で計測されています。おおよその誤差は数メートルから10メートルぐらいです。
ICT施工で主に使用するのは次の「相対測位」の方になります。
こちらは単独測位と比べて二つの点を使ってベクトル位置を求めるという方法になりますので、誤差に関しては100万本の1、10キロでいうと1センチぐらいの誤差の範囲になります。今回のこの講座のポイントでありますRTK-GNSSは、総体測位に分類されます。
「RTK-GNSS」と「ネットワーク型RTK-GNSS」
ICT施工で使うGNSS測位も細かく分類すると2種類に分かれます。
一つ目が、RTK-GNSSという方式になります。これはリアルタイムキネマティック方式の頭文字です。
もともと位置がわかっている基準点と、位置を求めようとする観測点を同時にGNSSの観測を行うことによって観測できます。リアルタイムに送信解析をすることができる方式です。必ず現場には基地局の設置が必要になるのが特徴です。データの送受信に関しては機械同士、無線を使ってデータを送受信するという方法になっています。
イメージで建機を設置してみましたが、基地局があって建機自体に受信機が設置されていますと、このように建機は移動していても常に位置情報を計測しながら施工することができるとという方法になります。
続いて2つ目はネットワーク型RTK-GNSSというものになります。冒頭でもお伝えしたVRS方式はこちらの分類に入ります。
もう一つ FKP方式がありますが、現在よく現場で使われている方式はFKP方式ではなくVRS方式が多いのではないかと思います。
特徴としては、基地局を設置する必要がないというところです。なぜ基地局の設置が不要かといいますと、日本全国にある電子基準点を使用するからです。電子基準点は、約1300点(1300ヶ所)に約20キロから25キロ程度の間隔で設置されています。
この電子基準点をおよそ3点使い、計測する対象範囲の中に仮想の基準点を設けます。その仮想基準点をもとに、測位したい点との2点間の相対測位を行うことによって位置情報を計測します。
基地局を設置する必要はありませんが、携帯の通信網を使ってデータの操縦送受信を行いますので、通信契約が必要になるというのがポイントになります。先程と同じようにICT建機に受信機を設置することによって位置情報を計測することができます。
各計測方法の特徴
ではここまで ICT施工時の計測方法を大きく3点お伝えしましたが、いったん整理してみたいと思います。
マシンコントロール・マシンガイダンス(MC/MG)機能がついたICT建機を使用する際に位置情報を計測する方法:
■トータルステーション(TS)を使用する方法
- ターゲットを追尾して計測
- 基準点からの視準が必要
- トンネル、高架下でもOK
- 雨天時は不可
- 基準点と移動局は一対での利用が基本
■RTK-GNSSを使用する方法
- 衛星からの電波を受信して計測
- 基地局の設置が必要
- トンネル・高架下などは不可
- 基本的に雨や雪でも可
- 移動局は複数設置可能
■ネットワーク型RTK-GNSS(VRS方式)を使用する方法
- 衛星からの電波を受信して計測
- 基地局設置不要、通信契約必要
- トンネル、高架下は不可
- 基本的に雨、雪でも可
- 移動局は複数設置可
以上、大きく3種類の計測方法をお伝えしました。
現場に合わせて測位システムを選定することが重要です。使用機器の選定は工事利益率を左右する大きなポイントです。リース料金も関わってきますので、今回のこの動画内容を踏まえ、それぞれの計測方法の違いをご理解頂いた上で現場に合った適切な計測方法を選択されることをお勧めいたします。
ICT施工ワンポイント講座【第1回】RTK-GNSSについては以上になります。
今後、i-Construction(アイ・コンストラクション)に取り組む建設会社の皆様のお力になるべくICT施工にまつわる情報を発信していきます。
今日の動画が面白かったな、為になったなぁ、今後も聴いてみたいな、と思われた方は、高評価・チャンネル登録をぜひよろしくお願いいたします。
それではまた次の動画でお会いいたしましょう。
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