はじめに
ICT活用工事では、従来施工での品質・精度の確認・報告に変わるものとして、あるいはそれらに加えて様々なICT施工に関する機械や測量機器の精度管理・精度確認報告(提出書類)が必要になります。
ICT活用工事の工種・計測技術によってどのような作業を行うかを把握し、適切な運用が求められるのですが、今回はそれらの中で必要となってくる「精度確認試験」について、地上型レーザースキャナーを例に取り上げてお伝えしたいと思います。
ICT活用工事における2つの精度管理
まずは、ICT施工の一連の工程の中でどのような精度管理にまつわる作業があるのかを整理してみます。
<工事基準点の設置>
最初に、工事開始にあたり工事基準点を設置しますが、この工事基準点の測量成果に対する精度管理が必要になります。場合によっては、その測定時に使用したTS等の品質を証明できる仕様書等が必要になるかと思います。これはICT施工でも従来施工でも同じです。
<起工測量>
次に行う起工測量では、使用した測量機器(多くはUAV、レーザースキャナー、GNSS)の精度管理が必要になってきます。
<ICT建機による施工>
その後3次元設計データを作成し、ICT建機による施工を開始する際には、ICT建機の精度管理が必要になります。
<出来形管理>
そして、施工後行う出来形管理では起工測量と同じく、測量機器や測量成果の精度管理や確認が必要になります。
ICT活用工事においては、次のように大きく2つの精度管理が存在します。
「計測成果に対する精度管理」
「計測機器に対する精度管理」
ICT活用工事では、工種や使用する計測技術により出来形管理基準が異なります。これには工種ごとに出来形の規格値が定められており、3次元計測技術を用いて得られるデータは、この基準で評価されることになります。これが、1つ目の「計測成果に対する精度確認」です。
2つ目の「計測機器に対する精度管理」とは、使用する測量機器や建機などが定められた基準を満たす仕様や性能を有しているかを確認するためのものになります。
精度管理の重要性
最新の測量機器やICT建機を使い始めるとその便利さに驚くのですが、重要なことは最終的に求められた精度で施工ができているかということだと思います。
最新の建機・機器だから大丈夫という過信が大きなミスに繋がらないように、しっかり運用するためにはそれぞれの工程で定められた精度を満たしていることと、着実な施工過程を進めているという確認が必要です。
最終的な出来形の品質に問題がなく工事が無事に竣工するためには、作業工程の各所で行う精度管理がとても重要なのです。
精度確認試験とは
国土交通省で策定されているICT活用工事の規定・要領類のなかで、主要な位置を占めるのが「3次元計測技術を用いた出来形管理要領(案)」になります。
この中にはICT活用工事の様々な工種・3次元計測技術を用いて出来形管理を行うにあたっての留意事項・手順等が定められています。
その中に、精度確認試験に関する規定があります。
精度確認試験とは、出来高・出来形管理にあたり、計測値の精度が適切に確保されていることを確認するための試験です。
注意すべきは、同じ3次元計測技術(例えば地上型レーザースキャナー)を使う場合でも、工種によって規定される精度確保の計測値が異なる場合がある点です。
地上型レーザースキャナーの精度確認試験
<実施時期>
利用前の12か月以内に実施する。
<実施方法>
計測機器本体から被計測対象の最大計測距離以上となる位置に2箇所以上の既知点を設置し、TLSによる計測結果から得られる既知点の点間距離を計測する。
上記の手法により、現場または別の場所で事前に行う。
<評価基準>
10m以上の離隔を確保した検査点(基準点)の点間距離をTSあるいはテープで計測し、TLSによる計測成果と比較し、その差が±20㎜以下であることを確認する。


<記録・報告>
精度確認の実施結果を記録、提出する。


ICT施工現場のサポート事例
私たちは、ICT活用工事の測量作業を依頼されることがありますが、測量作業以外にもICT施工に関する様々な助言や技術的指導といったサポートも行っています。ここで、とあるICT施工現場のサポート事例をご紹介します。
自社で地上型レーザースキャナーを所有されているA社さん。これまで複数のICT現場で頻繁に使用されており計測作業も慣れたものでしたが、精度確認試験についてはすでに他の現場で12か月以内に行った結果報告書を提出されようとしていました。
ところが、今回の現場では計測予定距離以上の測定結果をその報告書では確認できない可能性があり、改めてご自分の現場で精度確認試験を行うことになりました。
今後は、どの現場でも自分たちですぐに精度確認試験ができるよう、私たちが現場で一緒に作業をしてサポートさせていただきました。社内の特定の担当者だけではなく、ICT現場に携わる管理者全員がその方法を共有できるよう作業手順のマニュアルも一緒にお渡ししました。
まとめ
これまで、ICT活用工事の対象となる工種や計測技術は毎年拡大されてきました。
これまでの工種はもちろん新たなものも、その手順や精度管理の基準をよく理解して作業に当たる事が重要です。
会社としては多くのICT工事を受注していて実績があっても、現場監督自身にとっては初めてのICT施工だったり、まだまだ経験が足りない場合もあるかと思います。
私たちはそのような皆さんのお役に立てるよう、ICT活用工事に関する精度管理や精度確認の方法について、今後もわかりやすくまとめた情報を提供できればと思います。