はじめに
前回までのコラムでは、ICT活用工事における地上型レーザースキャナーやICT建設機械に関する精度確認についてお伝えしました。
【ICT活用工事での精度確認①】地上型レーザースキャナーの精度確認試験とは
【ICT活用工事での精度確認②】ICT建機の精度確認とは
今回はドローン測量の精度確認についてお話したいと思います。
このコラムではわかりやすく「ドローン測量」という言葉を使用していますが、国土交通省の出来形管理要領では「空中写真測量(無人航空機)」、国土地理院の「UAVを用いた公共測量」と同義と捉えて読み進めてください。
目次
土木現場でのドローン活用とは
最近、土木現場で目にすることの多くなったドローン(無人航空機/UAV※)ですが、皆さんも会社やご自身でドローンを導入されている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
※無人航空機(むじんこうくうき、(英: Unmanned Aerial Vehicle、UAV)は、人が搭乗しない(無人機である)航空機のこと。通称としてドローン(英: drone)と呼ばれることもある。)
Wikipediaより引用
自らの手でプロポ(コントローラー)を操縦しながら空撮出来るなんて楽しいですよね!
そんなドローンを土木現場で活用する目的は大きく次の2つがあります。
現場の写真管理のため
日々の進捗状況の把握や納品・検査時に使用するための写真管理は、現場管理には必要な作業になります。地上よりも上空からの全景写真の方が、進捗管理や打合せ資料等で使用する際には有効であり、何より簡単に素早く撮影できるため作業効率も上がります。
現場の起工測量や出来形管理のため(3次元測量)
ドローンを使った測量は、トータルステーション等を使った1点1点を計測する単点計測ではなく、面的な計測が可能な3次元測量になります。それによりX,Y,Zの座標値を持った計測対象範囲の点群データを作成することができます。
いずれもドローンの特性を生かした活用方法ですが、本コラムで解説する精度確認は、3次元測量に関するものになります。
ドローンを飛行させる前に
精度確認についてお話する前に、ドローン飛行にあたっての留意事項をお伝えしなければいけません。
わたしたちはドローンスクール事業も行っており、土木現場でのドローン活用に特化した内容で講習を行っています。
講習でお伝えしている内容から主な留意点を抜粋します。
飛行禁止区域等の飛行条件
ドローンはどこでも飛ばしていいわけではありません。DID(人口集中地域)上空や空港周辺などの飛行禁止エリア、日中や目視内での飛行など、法律で決められたルールで運用する必要があります。
天候を含めた飛行環境
風速が強くなる荒天時、電波塔などの電波干渉物の近くでの飛行を避けるなど、周りの環境にも留意が必要です。
操縦者の技能や作業体制
ドローンを取り扱う操縦者が必要な技能を備えているのか、副操縦士や安全管理者等の飛行体制も整備しておく必要があります。
機体性能や整備
ドローンの性能はもちろん、測量時にはカメラの性能にも留意します。
近年ドローン関連のニュースが取り上げられることも増え、ドローンの免許制度導入が予定されているなど、建設業界のみならず航空業界からも目が離せません。
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【2022年度航空法改正】どうなるドローンの国家資格ー建設現場でドローン免許は必要かー
ICT活用工事でのドローン運用規定と要領
ICT活用工事で使用するドローンには、カメラを搭載して行う空中写真測量とレーザー測量のためにレーザースキャナーを搭載した2種類があります。対象工種や現場環境によって適したものを選択します。
運用時には要領や規定が設けられており、国土交通省では「3次元計測技術を用いた出来形管理要領(案)」、国土地理院からは「UAVを用いた公共測量マニュアル(案)」がそれにあたります。主にこれらをもとにして運用を進めることになると思います。
次に、この「3次元計測技術を用いた出来形管理要領(案)」の【土工編】空中写真測量(無人航空機)を用いた出来管理要領(案)の精度確認試験を例に説明します。
ドローンの精度確認
1.何の精度を確認するのか
具体的な作業手順を説明する前に、空中写真測量と精度確認の目的について一旦整理してみましょう。
空中写真測量とは
従来より空中写真測量とは有人航空機を使用して行われていました。近年は無人航空機(ドローン)の開発や技術の進化によって、比較的安価に空中写真測量ができるようになったと同時に、撮影した空中写真を3次元データ化できるようになりました。
そのため、この要領の「空中写真測量」とは「空中写真による3次元点群化測量」と言い換えた方がわかりやすいかもしれません。
確認するのは何の精度か
空中から写真を撮影し3次元点群化したときに、その点が正しい3次元位置を示しているかが重要となります。その時に確認するのが工事基準点をもとに設置された「標定点」と「検証点」です。標定点・検証点には空中写真から判別出来るよう「対空標識」を設置します。
その対空標識の地上での座標と、点群データ上の座標との差が規定範囲内かどうかを判定するのです。
この作業を行うためには専用のソフトウェアが必要です。
写真測量で取得するのはあくまで「画像データ」ですので、それを「点群データ」に変換する「3次元形状復元」という作業を行います。そのための写真解析ソフトウェアをSfM(Structure from Motion)と言います。
Agisoft社の「MetaShape」やPix4D社の「Pix4Dmapper」が有名なソフトウェアではないでしょうか。
このSfMソフトに写真データを読み込ませ、いくらかの時間をかけて処理が完了すると、オリジナルの「3次元点群データ」が完成します。
2.どんな作業をするのか
先に述べた出来形管理要領をもとに実施手順を簡単に説明します。
実施時期
ドローン測量による計測ごと、SfMソフトから計測点群データを算出する際に行います。
実施方法
現場に設置した既知点を使用し、ドローン測量から得られた計測点群データ上の検証点の座標を計測します。検証点の真値となる座標値は、基準点あるいは工事基準上などの既知点の座標値や基準点及び工事基準点を用いて測量したものを利用します。
評価基準
ドローン測量による計測結果を既知点などの真値と比較し、各座標との較差が【±50㎜以内】であることを確認します。
2.どんな提出書類が必要か
精度確認を行った際には、実施報告書の提出が必要です。要領やマニュアルに様式がありますので、そちらを参考に作成します。
カメラキャリブレーションおよび精度確認試験結果報告書
写真測量を行う際に考慮しないといけないのがカメラレンズの歪みです。その歪みの補正を行うのがカメラキャリブレーションです。SfMソフトでの処理時に行った場合、報告書には処理日を記載します。
そして、先に説明した各座標の較差がわかるよう計測値を記載します。
GNSSの精度確認試験
現地に設置した検証点の座標計測にGNSSを使用した場合は、その精度確認試験も必要になります。そちらもあわせて報告書を提出します。
まとめ
ドローン測量を行うには、事前の測量計画に加えドローンの安全管理も必要になります。わたしたちも日頃ドローンによる測量業務や現場でのアドバイスやサポートを行う中で、事前準備や配慮すべき事項、留意事項が多岐にわたると実感します。
しかしながら、ドローン測量自体は非常に有用な方法であると感じます。なぜなら、広域な現場になると地上からの計測よりも上空からの方が効率的だからです。主な3次元測量である地上型レーザースキャナーやドローンを、工種や現場の特性に合わせて適切に選択できれば、かなりの現場に対応することが可能になります。
国土交通省が推し進めるICTの全面的な活用においても、あらゆる現場を3次元化することで対応できる幅が広がるのではないでしょうか。
実際のドローン測量作業では、コラムに書きつくせない細かい内容がたくさんあります。本コラムでは、まずは現場での作業をイメージしていただけるよう内容を絞ってお伝えしていますが、より詳しい内容をお知りになりたい場合には、研修やセミナーなども実施していますのでお気軽にお尋ねください。