国土交通省のi-Construction取り組み発表直後の2017年からICT施工に着手し、現在(2022年10月時点)22現場目のICT活用工事に取り組んでいる森下建設株式会社(本社:島根県江津市)は、当社(ストラテジクスマネジメント株式会社)がサポートを行う企業様の一つです。
土木部全員がICT施工の工程全般を理解し、ICT活用工事の施工管理ができる技術者も増加中の森下建設。自らが3次元設計データを作成できる土木部長を中心に、ICT対応スキルが高い地方の中小建設会社です。
今回のコラムでは、当社がサポートしている森下建設の数ある現場から、道路改良工事の施工管理でBIM/CIMデータを活用した事例をご紹介します。
施工管理で活用するBIM/CIMデータは施工会社が準備する
ご存知の通り、国土交通省からは「2023年度までに小規模土工を除くすべての公共工事でBIM/CIMを原則適用する」という方針が打ち出されています。
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今さら聞けない施工管理者のためのBIM/CIM解説|BIM/CIM活用工事とICT活用工事の違いとは
2023年度までの発注者から受注者に求められる要求事項(リクワイヤメント)は、任意適用として以下の通りとされています。
2022年度BIMCIM活用工事の要求事項(リクワイヤメント)案
- BIM/CIMを活用した監督・検査の効率化
- BIM/CIMを活用した変更協議等の省力化
- リスクに関するシミュレーション(地質・騒音・浸水等)
- 対外説明(関係者協議、住民説明、広報等)
また、工事においては「設計3次元モデルを用いた設計図書の照査」「施工計画の検討」の際にBIM/CIMを原則適用しましょうとなっています。
ですので、施工段階でBIM/CIMデータを活用したい場合には受注者側で準備をする必要があります。
まず全現場でICT導入を検討することから始める森下建設にとって、効率的な施工管理のために3次元データを作成するは当たり前のこと。
今回の現場では、設計図書の照査と施工計画の検討だけではなく、現況地形にあわせた構造物を含む詳細なBIM/CIMデータを作成して、施工管理に活用したいという現場責任者からの依頼がありました。
BIM/CIMデータを活用する建設会社にとって、データ作成は自社で内製化せず、当社のようなICTサポート企業と連携すると便利だという事例でもあるのでご参考ください。
正確なシミュレーションで確実な工程管理
今回の工事は、プレキャストパネル345枚を設置する擁壁工の現場です。
監理技術者で現場責任者の水野さんから依頼されたBIM/CIMデータの活用目的は次の2つでした。
1)構造物設置時の干渉チェック
今回の現場は床掘形状が複雑なため、既製品パネルの干渉が起きないか事前に確認したい。
2)他工区との接合状況チェック
擁壁設置後には、調整コンクリート打設→プレガード基礎→ガードレール設置があるため、隣接する既存構造物との接合をシミュレーションしたい。
完成形状を見える化するBIM/CIMデータがあると、正確なシミュレーションで確実な工程管理がしやすくなり、発注者との協議にも大いに役立ちます。
これまでいくつかのICT現場でご一緒してきたので、ICT技術の導入メリットを十分理解されているベテラン技術者の水野さん。
ご要望が明確でサポート時にも気合いが入りますし、私自身、水野さんから多くのことを学ばせていただいています。
本現場のBIM/CIMデータ紹介
今回の現場で実際に活用したBIM/CIMデータをご覧ください。
1)構造物設置時の干渉チェック
2)時間軸を加えた4Dの施工工程管理
3)対外説明(発注者との変更協議)
現場責任者の声
BIM/CIMデータ活用効果を実感した現場責任者水野さんの声です。
「複雑な床掘形状だったので、既製品パネルがきちんと収まるかが不安でした。でも、作成してもらったBIM/CIMデータで現状や今後のシミュレーションを事前に把握できたので安心しました。」
「既存構造物との接合がうまくいかないことが、BIM/CIMデータのおかげですぐにわかりました。設計変更後の想定データも準備していたので、監督職員との変更協議がとてもスムーズでした。」
「施工管理業務と並行して自分でBIM/CIMデータを作成するのは正直難しいです。今回のような複雑な現場だとなおさらです。こちらの意図するものを作成してくれるサポートパートナーがいることで大変助かっています。」
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は、道路改良工事におけるBIM/CIMデータの活用事例をご紹介しました。
この現場のBIM/CIMデータ活用の発端は、「こんな3次元データがあれば管理しやすいんだけど、できますか?」という水野さんの現場目線のアイデアから始まりました。
国土交通省の要領やマニュアルにはない現場目線のアイデアを、BIM/CIMの取り組み開始のきっかけにされても良いかもしれません。
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