ICTやBIM/CIM活用工事に取り組む全国のみなさま、ICT施工の現場で利益はでていますか?
ICT建機のレンタル費や外注費用などの経費がかさんで利益を圧迫していませんか?
これまでわたしたちは、ICT現場の利益化に対する考えを当サイトや現場、セミナーなどでみなさまにお伝えしてきました。
コラムをご覧になっていない方は下のリンクからどうぞ。
真の生産性向上とはーDXとICT技術導入は建設現場の利益化につながるのかー
「利益化って、言うのは簡単だよね」
「わかっちゃいるけど、やるのは大変なんだよ」
「本当にできるのか不安しかない」
そんな声が聞こえてきそうです。
そこで、今回はICT施工で利益を出している建設会社の実績をご紹介したいと思います。
ICT施工と聞くと、どうしても経費がかさむイメージがいまだ付きまといますが、利益を出すのは決して難しくはないと感じていただければ幸いです。
利益が出るICT現場とは
ICT現場の利益率を出すにあたって、建設業における粗利益を以下の出し方で計算します。
工事原価には、材料費、労務費、外注費、機械経費、その他経費が含まれます。
このコラムで言う利益率とは「粗利益÷工事価格」を指します。
一般的に建設業における適正な利益率は18%~25%と言われています。
もちろん正確な適正数値は企業によって違うと思いますが、今回のコラムでは「建設業の経営分析(令和3年度)|(一社)建設業情報管理センター」を参考にして、ICTで利益が出る現場を以下の定義で考えたいと思います。
まず、参考資料から 対象となる企業の分類と収益性指標を照合します。
企業の分類
- 業種別
- 売上高別
企業の収益性指標
売上高総利益率(%) = 売上総利益 ÷ 売上高 × 100
この分析では土木工事のうち従来施工とICT施工の区分はされていません。
そのため、該当する企業分類に対する収益性指標と比較して、対象となるICT施工現場の利益率が上回っていれば「ICT施工で利益が出た」ものと考えることにします。
森下建設のICT現場実績と利益検証
島根県江津市(ごうつし)に本社を構える森下建設株式会社。
創業は70年を超え現在の社長で三代目となり、地元では「森建(もりけん)」と呼ばれて親しまれ、地域の守り手として総合建設業を営んでいます。
そんな森下建設は2017年からICT施工の取組みをスタートし、現在(2023年7月時点)では23現場のICT施工実績がある上、2020年以降ほとんどのICT現場で利益が出ている状態です。
森下建設の特長
公共工事入札参加資格がCランクにあたる森下建設は、ABランクの建設企業が全国展開のゼネコンクラスであることから、典型的な地域密着型の建設企業と言えます。
元請けとして行うICT活用工事は自治体発注工事が主で、国土交通省発注のICT工事には下請けとして携わってきました。
創業以来ずっと元請け主体で土木事業を続けてきましたが、ICT施工には現在の三代目社長から取り組みを開始しました。
7年前の代替わりを機に、現在の社長がくだした土木事業に関する決断は主に次の3点でした。
- 建設ICT化に積極的に取り組む(すべての現場でICT導入を検討)
- 建設ICT化への投資はいとわない(人材育成、ICT建設機械など)
- 効率とクオリティを上げるためICT導入を専門家に依頼する(パートナー企業の活用)
導入当初こそ投資回収率は高くはありませんでしたが、今となっては元請け、下請け現場ともにほとんどのICT現場で利益が出せている状態です。
ICT施工実績23現場のうち、元請けは11現場ですべてが自治体発注工事です。
その中の5現場は受発注者協議でICT活用工事対象にはならなかったため、自主取組としてICT施工を実施しました。
森下建設では「ICT活用工事対象で費用計上できる現場だから実施しよう」という考え方ではなく、すべての現場でICT導入することを前提で工事に着手します。そのため、「この現場でICT技術を最大限に活用するためにはどうすればいいのか」という視点で現場と向き合うことから始まります。
もちろん検討した結果、従来施工になる現場もありますが、大事なのはすべての現場をICT導入前提で検討することで、利益化へのプロセスを関わる全員が検討段階から共有できる点です。
現場単位の利益化の判断基準を、現場担当者と管理職や経営陣の間で共有できるのは大きな強みであり、森下建設の特長と言えます。
それが、ICT活用工事対象の有無に関わらず「利益が出るICT現場」を実現できている要因の一つであると考えます。
まとめ
今回のコラムでは以下の点をお伝えしました。
- ICT施工で利益が出る現場の指標は売上高総利益率を参考にする
- 参考指標と現場利益率との比較で客観的な検証をしてみる
- 森下建設の利益が出ている(指標以上の利益率である)ICT現場は7割以上
- 「すべての現場でICT導入を検討」するのが森下建設の特長
当サイトは建設ICT化に関わるあらゆる立場の方々にご覧いただいていますが、特に森下建設と同じような建設会社の方には、このコラムの内容をぜひ参考にしていただきたいです。
ICT現場の利益化は決して難しくはありません。みなさまにも実現できることです。
ただ、どのようなプロセスを歩めばいいのかが見えていないだけです。
具体的なICT導入プロセスと利益化までの考え方については、引きつづき森下建設を例に次回のコラムで、より詳しくお伝えしたいと思います。