こんにちは、建設ICT.com編集部です。
前回のコラムでは、国土交通省によって以下2つに向けた動きがあるということをご紹介しました。
- より実態に即した費用の計上
- 工事単位での効率化(ステージ2)に移行
これらの動きが示しているのは、積算方法、予算の組み方、工期の設定など、あらゆることがICTの活用を前提としたものに変わっていく可能性があるということでした。
▽前回のコラム
業界の動向把握と人材育成のポイント①【情報に隠された国土交通省からのメッセージ】
そしてこの変化についていくためには、会社としてICTに対応できるようになることが求められます。
ここで断っておくと、これは必ずしも内製化をするべきだというお話ではありません。
大切なのは、しっかりとICTを理解したうえで「この部分は外注をする」というような判断をできるようになることです。
しかしそこには「ICT人材の育成」という壁が立ちふさがります。
今回は人材育成で重要な「ノウハウの水平展開」について、そのポイントを解説します。
現場単位でのノウハウ蓄積のリスク
ICT活用工事を行うためには、3次元測量、3次元設計、ICT活用工事の施工計画など、あらゆる場面で新たなノウハウが求められます。
このとき、会社としてICTに対応していこうとするのであれば、会社全体でノウハウを水平展開していくことがとても重要になります。
最初のチャレンジとして、まず一つの工事でICT活用工事に取り組んだとします。
このとき、その工事に関わる現場技術者さんや施工担当者さんなどは、その場でICTのノウハウを得ることができます。
しかし当たり前のことですが、工事は現場で進んでいきます。
つまり、そこに関わった人たちにはノウハウが蓄積されても、関わらなかった人たちは分からないまま、という状況が簡単に起こりうるのです。
これでは会社としてICTへの対応力が身に付いたということにはなりません。
もしもICTを経験し理解した人が何らかの理由で離脱した場合、会社に残った人たちにはICTのノウハウがない、つまり会社にノウハウが残らないからです。
技術者不足による転職・引き抜き
昨今、技術者の転職や引き抜きは増加傾向にあり、その背景にあるのは技術者不足です。
建設業界全体として技術者不足は深刻化しています。その上ICTの学習にはお金や労力がいります。
そうなると、既にICTを理解し対応できる技術者となれば、各社のどから手が出るほど欲しい存在だということは容易に想像がつくのではないでしょうか。
さらに、2025年問題というワードも耳にしたことがあると思います。従業員の高齢化により、2025年に大量の退職者が出ることが見込まれているのです。
これまで長きにわたり建設業界を支えてきた世代が離脱し、さらなる人手不足、技術者不足に陥れば、転職・引き抜きがより一層加速することも考えられます。
このような状況を踏まえると、技術者の転職等のリスクへの備えは必要不可欠なものになってきているといえます。
そしてその備えのひとつが、ノウハウの水平展開。
言い換えれば「万が一ICTを理解していた技術者が転職等で離脱しても、会社にノウハウが残る状態にしておく」ということなのです。
ノウハウの水平展開をするにはサポート制度の活用がおすすめ
ここで問題なのが、「ノウハウの水平展開は簡単なことではない」ということです。
先述のとおり、工事は現場単位で進みます。工事のこと、お金のことなど色々なことが現場単位で決まってきた建設業界において、よっぽど工夫をしないとノウハウも現場止まりになってしまいがちなのです。
特に入札等級CDランクの建設会社様は人員が限られていることもあり、なかなかそこまで手が回らないことも多いのが現実です。
そこでわたしたちがおすすめしたいのは「第三者を活用すること」です。
社内の人間から直接言っても伝わりにくい場合でも、第三者を通すと素直に伝わるということは実はよくあります。
そして第三者を活用するために利用してほしいのが、ICTサポート制度です。
各地方整備局はICT活用工事に取り組む企業等を支援するために、ICTのサポート制度を設けています。
ICT活用工事で経験を重ねてきた企業がICTサポーター/アドバイザーとして認定を受けてサポートを行っているもので、必要なときに助言、技術的指導を受けていただくことができます。
▽サポート制度の詳細はこちらのコラムをご覧ください
ICT活用工事の挑戦に活用できる!地方整備局のサポート制度
わたしたちも関東地方整備局の「ICTアドバイザー」、そして中国地方整備局の「ICTサポート企業」として活動しています。
これまで、ICT活用工事における総合的なサポートを行う総合マネジメントを中心に、たくさんの建設会社様のサポートを行ってきました。
サポートは全国どこでも対応可能ですので、ご希望の際にはぜひお気軽にご連絡ください。
まとめ
これまで2回にわたり、国土交通省の動きから見る建設業界の展望と、それに対応するためのICT人材の育成のポイントを解説してきました。
会社全体としてICTを進めていこうとするときに最も大切なことは、社員全員が同じ方向を向き、同じ意識で前に進んでいくことです。ノウハウの水平展開によって「自分もICTができる!」という思いを芽生えさせることは、社内の意識づくりにも効果的です。
その意識づくりをうまくすることが「ICTができる会社」になることへの大きな一歩なのです。