【実例紹介】ICT建機にまつわるオペさんのストーリー
前回のコラム、ICT建機はオペが嫌がる!?むしろ、できるオペほど乗りたがるという事実【前編】では、現場の声をもとに、重機オペレーターがICT建機を嫌がる理由と、実際に乗ってみた時に感じるICT建機のメリットをご紹介しました。
今回は、実際に現場で起こった重機オペレーターさんのICT建機にまつわるエピソードをお伝えしていきます。
今日は俺が乗る!若手オペがICT建機の取り合い!?
とある災害復旧工事現場でのお話です。
ICT施工対象ではない現場でしたが、その会社は積極的にICT施工に取り組まれ、その現場も自社導入したマシンガイダンス付きのICTバックホウを使って進めることになりました。複雑な法面整形が必要な現場です。
その会社は若手オペの育成にも重きを置かれ、現場監督さんは、まだオペとしての経験が浅い若手二人にICT建機での山切り作業を命じました。
若手二人のうち、一人は業界歴自体は長く、どちらかと言えば兄貴分、もう一人はオペ歴は1年で、社内ではまだまだ半人前だと言われる新米オペさんです。
この会社にはオペさん以外にも熟練の方々が多く、整形面が複雑な災害現場の山切りを若手二人に任せてしまって大丈夫か、という心配の声も正直あがっていました。
ところが、いざ施工が始まると、若手オペ二人は慣れた手つきでICT建機のタッチパネル画面を操作し、現場監督さんに報告と指示を仰ぎながら、ICT建機のガイダンスに沿ってどんどん作業を進めていったのです・・・!みんなの心配は杞憂に終わりました。
さらに現場監督さんの話によると、毎朝1台のICTバックホウを、今日はどっちが乗るかと取り合いになっているとのこと。
それを伺ったときには、現場に活気があってとても良い雰囲気だと感じましたし、i-Constructionの成果の一つだとも感じました。
ちなみに、この現場には他の建設会社の幹部クラスの方々がICT施工の現場見学に来られたのですが、そこでICTバックホウの操作実演をされたのは、オペ歴1年の新米オペさんでした。見学者の皆さんが驚かれたのは言うまでもありません。
ICT施工に後ろ向きだったオペが180度方向転換
続いては、ICT施工の下請現場で作業をされた中堅オペレーターAさんのお話です。
Aさんは、とある現場でICTバックホウを使った床掘作業を任され、初めてICT建機に乗られました。
それまでAさんは、どちらかと言うとICT施工には後ろ向きな姿勢だったのですが、ICT建機の操作経験者をどんどん増やしたいという会社の考えもあり、そのときは渋々ICT建機に乗って作業をされました。
「乗ってしまえばこっちのもの」と会社が言ったかどうかはさておき、ICT施工で引っ張りだこのその会社さんには、その後にも次々に仕事がやってきます。
次のICT施工現場には、そのAさんをメインにした体制で臨む段取りが進んでいました。
ただ、AさんはICTにもともと後ろ向きで、前回の現場でも渋々でしたし、どうしたものかといった管理職の方々のお悩みは、次のAさんの一言で吹き飛びます。
「その現場、ICT建機でやるんだったら自分、できます!」
確かに、従来建機だと整形に手間がかかり、工期を急ぐ必要があったその現場には、ICT建機を導入するのがベストでした。
管理職の方々のお考えもICT一択だったので、渋々なAさんを説得するつもりでいたようですが、それは嬉しい誤算となり、Aさんを中心としたチームで無事にその現場を乗り切られたのでした。
もっと早く乗りたかった…熟練オペの気づき
さらに続きます。
とある盛土現場でICTブルドーザーに乗られた超ベテランオペレーターBさんのお話です。
オペレーター歴●十年の熟練オペのBさんは、絵に描いたような職人気質で、ご自身のこだわりと感性を武器に、淡々と今まで作業をされてきました。
現場監督さんは、時にはダダをこねるBさんに代わって作業をされたり、日々ご機嫌を取りながら工程を着々と進められていました。
ところが、自然を相手にする土木現場において、イレギュラー対応は標準装備。雨が降れば、現場はストップせざるを得ません。
工程の遅れを取り戻すためには、誰がどう見てもBさんがICTブルドーザーに乗るしかない状況です。数々の現場を経験してきたBさんですから、この状況を見れば、もはやご機嫌とりなど不要、現場監督にやり方を教えてもらい、早速作業に入りました。
マシンコントロールのICTブルドーザーは、設定された設計面にあわせて排土版が固定され、オペレーターの手元の操作が少なくてすみます。
作業を終えたBさんの次の言葉に、現場監督はこれまでの苦労が報われた気がしたそうです。
「こんなに楽なら、もっと早く乗りたかった。今度からはICT建機に乗らせてくれ。」
その道のスペシャリストになっても、まだまだ自分の知らない新たな気づきがあるのですね。
まとめ
今回は実際の現場で見てきた重機オペさんストーリー3本をご紹介しました。いかがでしたでしょうか。
国が推し進める生産性革命の一端であるi-Constructionの取り組みでは、土工現場の生産性を上げることが命題の一つになっています。実際に現場では、測量~設計~施工~出来形管理の各段階で、ICTを取り入れることで効率化が図れます。ICT建機による施工だけを見ても、その効果は歴然です。
これまで述べた実例の通り、ICT建機の導入で、結果的にオペレーターさんへの負担が減り、自身の作業効率が上がることに気づいたオペレーターさんは積極的に乗りたがるようになります。
もっとたくさんのオペレーターさんたちがこの事実に気づかれ、ICT建機を使いこなし、それが土木現場全体の生産性向上に繋がるよう、これからもどんどん情報を発信していきたいと思います。