はじめに
2021年度ICT出来形管理要領改定のポイント、第2回目のテーマは出来形管理要領の再編です。
再編でどこがどう変わったのか、変わったことで感じるメリットや注意点を日々要領を使用する現場目線から赤裸々にお伝えします。
前回(その1)のコラムをまだご覧になっていない方は、そちらもあわせてお読みください。
2021年度国土交通省ICT出来形管理要領改定のポイント(その1)ICT対象工事と工種の拡大【ICT施工実務シリーズ⑦】
出来形管理要領とは
そもそも出来形管理要領とは何なのか、何を目的に作られたものかを説明します。
公共工事の出来形管理に関わるのは、発注者である監督官や検査官、受注者である元請業者です。それぞれの業務に関する出来形管理要領の目的と記載内容は次の通りです。
<監督・検査業務>
・ 業務に必要な事項の策定
・ 適切な業務の実施や更なる効率化
<施工管理業務>
・ 施工管理の各段階(※)での作業の確実性と自動化、省力化
※工事測量、3次元設計データの作成、施工中と施工後の出来形確認・出来高確認、出来形管理帳票の作成
<出来形管理・出来高管理>
・ 効率的かつ正確に実施されるための適用範囲や具体的な実施方法、留意点等
要は、受発注者にとって共通の目的である、公共工事完成のためのルールブックにあたるものが出来形管理要領です。
ルールブックですから、具体的な方法や手順、基準や規格値などが細かく明記されています。情報量が多いため、隅々まで読み込み、内容を理解するにはちょっと一苦労するのが正直なところです。
i-Constructionの取り組み開始以降、新技術・ICT対応工種の拡大に伴い、様々な出来形管理要領が策定され、改定も毎年行われてきました。
今回の再編について
昨年度までの出来形管理要領は、ドローンや地上レーザースキャナーといった3次元計測技術と、土工や舗装工などの工種ごとに分類され、全部で18種類ありました。それが、今回の再編で「3次元計測技術を用いた出来形管理要領(案)」の1種類にまとめられています。
例えば、昨年度までは7種類あった「土工」に関する要領が、今年度からは「3次元計測技術を用いた出来形管理要領(案)の土工編」に全てまとめられました。
「舗装工」に関しても、4種類あった要領が「3次元計測技術を用いた出来形管理要領(案)の舗装工編」に全てまとめられています。
そして、土工、舗装工以外の工種を含めた全体の構成は、以下のようになりました。
なお、監督・検査要領に関しては、昨年度までと同様、3次元計測技術・工種ごとの分類のまま改定されています。
ICT出来形管理要領再編のメリット
今回の再編で感じるメリットは次の2点です。
1)重複情報が削減されて見やすくなった。
昨年度までは要領ごとに同じ内容の情報が明記されていました。例えば、施工計画書に関する情報がそれぞれの要領に同じ表現で明記されていたため、土工の要領だけでも重複が8か所あったことになります。これが、1つにまとまったことにより重複がなくなり、全体的に整理されて見やすくなりました。
2)PDFリンク機能の活用で必要な情報にたどり着きやすくなった。
18種類の要領が1つにまとめられた結果、ページ総数は829ページにもなり必要な情報にたどり着くためには工夫が必要です。
それに伴い、「対象工種および対象技術一覧」「作業フローと目次」「要領本文」の独立したファイル同士が、Adobe Acrobat Readerのリンク機能を活用することで閲覧しやすくなり、目的の情報にたどり着くスピードが上がりました。
現場では、施工計画書を作成したり、施工管理の工程で出来形管理要領を確認することは日常茶飯事だと思います。必要な情報を探しだす時間が短くなったことで、
作業の効率化に繋がっているのではないでしょうか。
このリンク機能を使用する際には、国土交通省HPの「3次元計測技術を用いた出来形管理要領(案)の手引き」をご参考ください。
まとめ
ところが、現場ではルールブック通りにはいかないイレギュラーなケースや、より細かい判断が必要なケースも起こり得ます。そんな時には、受発注者間で協議をしながら、その他の基準類(公共測量マニュアルなど)からルールを準用させる必要も出てきます。
最近では、ICT施工途中のイレギュラー対応で、八方塞がりに陥った関係者の方からお問い合わせをいただくことが増えてきました。ICT施工の経験が無かったり、ノウハウが蓄積されていないと、ルールブックだけでは太刀打ちができないということなのでしょう。ルールブックを適正に把握して、チームに溶け込んですぐにプレーができる助っ人プレイヤーのような存在が求められているのかもしれません。
わたしたちは、そんな助っ人プレイヤーとしてICT現場に入ることもありますが、急な助っ人ではなく、スタートから同じチームメンバーとして一緒に取り組むICTサポートを得意としています。ご興味がある方はお気軽にお問い合わせください。
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次回のコラム(その3)では、要領改定にまつわる現場の具体例を取り上げてみたいと思います。
このコラムが少しでもお役に立てましたら、次回もご覧いただきますと幸いです。