いよいよ2023年度から本格的にスタートするBIM/CIM原則適用。皆さん準備はできていますでしょうか。
先日、2023年4月以降のBIM/CIM原則適用に関する具体的な方針が国土交通省から発表されました。今回のコラムでは、その方針内容から施工段階では何をやるべきなのかを簡単に整理しましたのでご参考ください。
BIM/CIMに関する以前のコラム記事もあわせてご参考ください。
今さら聞けない施工管理者のためのBIM/CIM解説|BIM/CIM活用工事とICT活用工事の違いとは
2023年度BIM/CIM原則適用の方針
先日行われた第9回BIM/CIM推進委員会(2023年1月19日開催)で、国土交通省から発表されたBIM/CIM原則適用に向けての具体的な方針。
今回は概略のみですが、その内容を簡潔にまとめてご紹介いたします。
BIM/CIMは情報共有の手段として3次元モデルを主に使用するのが特徴です。
3次元モデルの活用目的の設定は「義務項目」と「推奨項目」の二つに区分されることになりました。
これは業務・工事ごと、特性に応じて発注者が選択します。
義務項目
- 3次元モデルの活用目的は主に視覚化による効果
- 発注者が指定した目的に基づき、受注者が3次元モデルを作成、活用
- 活用目的を達成できる程度の範囲、精度で作成
- 設計図書については当面は2次元図面を使用(3次元モデルは参考資料)
推奨項目
- 3次元モデルの活用目的は、「視覚化による効果」「省力化・省人化」「情報収集等の容易化」
- 発注者が指定した目的に基づき一定規模、難易度の事業については、受注者が1個以上の項目に取り組む
- 該当しない業務、工事であっても積極的な活用を推奨
これらが義務項目と推奨項目の概要です。
施工段階でやるべきことと留意点
当社が現場でサポートするのは工事を受注する施工会社が主になりますので、このコラムでは施工段階でやるべきことに絞ってお伝えします。
義務項目(施工段階)
- 活用目的は「施工計画の検討補助」「2次元図面の理解補助」「現場作業員等への説明」
推奨項目(施工段階)
- 活用目的は「重ね合わせによる確認」「現場条件の確認」「施工ステップの確認」「施工管理での活用」「不可視部の3次元モデル化」
留意点
- 義務項目は設計段階で3次元モデルを作成している場合に閲覧することで対応
(作成、加工は含まない) - 機械設備工事、電気通信設備工事、維持工事は対象外
- 災害復旧工事は対象外
すでに設計段階で作成された3次元モデルを活用することから、施工段階でやるべきことに作成や加工は含まれません。
実は対応可能な施工業者もいらっしゃるのではないかと予想しますが、活用目的を達成できる程度以上のものは求められていないとすると、対応範囲を判断する際には留意が必要だと思います。
当社のBIM/CIM取組み
建設ICT.comの運営元である当社(ストラテジクスマネジメント株式会社)では、2017年6月からBIM/CIMデータの作成・活用の取組みを開始しています。
初めてのBIM/CIM取組みは実は土木工事現場ではなく、2020年9月に開催された日本初の公道レース「A1市街地グランプリ」でした。
コースの安全証明とレースの実現を目的に、市街地全体の3次元点群データ取得や3次元のコース設計といった3次元モデルを活用した取組みだったのです。
市街地全体を3次元点群化するために行ったドローン測量に関しては、2018年度の土木学会全国大会で取組み方法や成果を発表しました。
▽参考記事
日本初公道レースのコース安全検証にICT土木技術を活用(3次元測量編)
この取組みは土木工事ではありませんが、この度のBIM/CIM原則適用の各項目に当てはめてみると、3次元モデルの活用目的は、関係各位との合意形成に向けた度重なる話し合いやコースの安全証明、安全防護体の数量把握、当日の設営撤去のシミュレーションなど「視覚化による効果」と「情報収集等の容易化」にあたるのではないでしょうか。歴史的なレースの成功を陰で支えていたのはまさに3次元モデルだったのです。
▽参考記事
日本初公道レースのコース安全検証にICT土木技術を活用(3次元モデル編)
日本初公道レースの成功を支えたICT土木技術とは(ミッション達成編)
日本初市街地レースの成功を支えたICT土木技術【動画で紹介】
その後、当社は20以上の土木工事現場でICT技術導入のサポートを行ってきました。
正直申し上げると、施工段階においては現時点で発表された義務項目、推奨項目の基準以上の目的で3次元モデルを活用しているところがあります。なぜなら、現場ではそれが必要だからです。
当社のサポート実績: ICT現場サポート実績
▽参考記事
道路改良工事における施工用BIM/CIMデータの活用事例(森下建設株式会社)
実際のICT施工現場における3次元モデルの活用には、もっと多くの可能性を感じます。施工管理能力に長けたベテラン現場監督の頭の中には、まだまだアイデアが眠っているはずです。
それを掘り起こし、形にするのが当社の役割だと思っています。
まとめ
公共事業の業務、工事におけるBIM/CIM原則適用の活用目的は発注者主体で決められます。真の効率化を図るには、施工段階でも大いに活用したいものですが、現時点のルールではコストや労力の部分で受注者(施工業者)の負担が大きいのが現状です。
先にお伝えした通り、設計図書は当面は2次元図面が使用されます。しかし、将来は3次元モデルの全面活用を目指すとの記載もあります。
近年のBIM/CIM業務の件数が右肩上がりで増加しているということは、「3次元モデル全面活用」の将来も決して遠くはないのではないでしょうか。
「まだ大丈夫。全部義務項目になった時にやればいいよ」と悠長なことを言っている場合ではありません。なぜなら、BIM/CIM原則適用は2年前倒しで進められているからです。そう、いよいよ「待ったなし」なのです。
まずは、現時点で設定されている義務項目の内容は確実に対応できる状態にすることです。
さらに、先んじてBIM/CIM適用の実践を積んでいけば、現場が肌で感じられる真の効率化が実現できるのではないでしょうか。
今回ご紹介しましたBIM/CIM原則適用への対応を含め、ICT活用工事全般においての課題やお悩みごとなどがございましたら、ぜひとも当社までお気軽にお問合せ、ご相談ください。