― 森下建設経営陣の姿勢
関わる人々を愛し、愛され続ける「地域の守り手」
森下 豪 さん
1級施工管理技士で測量士。会社の2番手として森下建設を支え続けている。測量コンサルティング会社での勤務経験もあり、建設土木業界の大ベテラン。地元愛溢れる人物で、地域の伝統芸能である石見神楽で舞手を演じることも。
インタビュアー 建設ICT.comスタッフ
ICT工事に取り組む経営者の方や、現場を担当する現場監督さんに向けたセミナーや研修を主に担当しています。社内ICT化のスピードと精度アップに向けた現状の課題抽出と具体的な実施項目をわかりやすくお伝えすることができます。DX・ICTに強い人材の育成はお任せください。
― 森下建設経営陣の姿勢
関わる人々を愛し、愛され続ける「地域の守り手」
森下 豪 さん
1級施工管理技士で測量士。会社の2番手として森下建設を支え続けている。測量コンサルティング会社での勤務経験もあり、建設土木業界の大ベテラン。地元愛溢れる人物で、地域の伝統芸能である石見神楽で舞手を演じることも。
インタビュアー 建設ICT.comスタッフ
ICT工事に取り組む経営者の方や、現場を担当する現場監督さんに向けたセミナーや研修を主に担当しています。社内ICT化のスピードと精度アップに向けた現状の課題抽出と具体的な実施項目をわかりやすくお伝えすることができます。DX・ICTに強い人材の育成はお任せください。
ICTへの取り組み。『将来性』があるから受け入れる。
― ICT建機を導入し、すでに15・16現場ものICT活用工事を請け負っていらっしゃる森下建設さんですが、ICTの導入について副社長の率直なお考えをお聞かせください。
今までも建設土木業界はIT化をはじめとして、様々な変化をしていますから、ICTの登場もまた自然な流れだと感じています。
昔ながらのやり方ばかりでは若い人はついてこないでしょうし、ICTに限らず新しいやり方には将来性があるとわかっていますから、自然と取り入れていくものだと思いますよ。機械もだんだん進化していっていますからね。
― ICTを施工面と管理面の両方の面からうまく活用されているというところが森下建設さんの特徴の一つだと思いますが、両方に携わっている副社長から見て、施工の立場で見るICTと管理の立場から見るICTはそれぞれどのようなメリットがあると感じますか?
施工の場面でいうと、まだ技術のない新人でも一定の仕事ができるという点はいい点ですよね。
それで自信をつけてその人がだんだんうまくなっていくとより良いと思います。
管理面でいうと、当社のように少数精鋭で現場を見ている会社でも効率化を図れることがメリットです。
すべて「人の技術」で行っていた部分をICTが一部肩代わりしてくれるので、仕事が楽になります。必要以上のことをしなくてもよくなるのは素晴らしいことですね。なので、ICTについては難しいことを考える必要は全くなくて、どうしたら自分たちの仕事を楽にできるかを考えたら必然的にあった方がいいよねという結論に至る。そんな技術だと思います。
そういった楽にするための一歩を面倒くさいと考えている限りはいつまでたっても社内のICT化は進まないのかなと思います。
― 国がICTの導入を推奨し始めてから5年が経ちましたが、実際にICTを導入されてみて、どうすればもっとスムーズに全国のICT化は進んでいくと思われますか?
この間も近くの会社さんがICT建機を買っていましたし、やりたい会社はタイミングを見て少しずつやり始めてはいるみたいですよ。
その一歩踏み出すかどうかは、その会社の社長がやるかやらないかの差だと思います。
今までは10,000㎥以上でなければICT活用工事の該当範囲に入りませんでしたが、これからは該当範囲も広がるというお話でしたから、今後ICTに興味を持つ会社はより増えていくと思います。
ただ、そうするからには行政もきちんと業者が損しないような仕組みを作っていかないと、取り組む会社は増えていかないでしょうね。国の施策でやるのであれば施工側の立場の認識や積算などまで行政が見てくれるような仕組みが必要になってくると思います。
うちもはじめはかなり損していますからね。投資と考えれば有益ではあったんですが、そこは建設会社のICT化への一歩を踏みとどまらせている要因の一つではないでしょうか。
行政の方からしてもICTは新しい試みですから、工事の内容に応じて最適な方法を見つけつつ、それをより進化させていくことが重要ですね。
役所も若手の方が増えてきていていますし、そういった方々もICT施工がどんなものであるかをより理解してくださればICT化は進むと思いますよ。一度担当をご経験されれば自信をもって進めていくこともできるでしょうし、我々建設会社の人間だけでなく、お互い勉強していかないといけませんね。
森下建設の将来を見据えて「技術とともに育てる人を育てる」
― この先も建設業界はICTに加え、新たな技術が登場していくことが考えられますが、新しい技術や新しい世代のために今後どのような社内環境が求められると思いますか?
人材を育てる環境づくりが最優先事項だと思います。
他社さんのお話を聞いていると、技術を持った人材が入社しても、その人材がすぐ辞めていってしまうことも多いようで、苦労しているみたいです。ですから、ただ技術を持った人を増やせばよいというわけではないんです。
会社のために本当に大事なのはそれらの技術を教えられる人です。育てる人を育てることが、会社にとって重要だと思っています
うちの若手社員たちも将来的には育てる力を持った人材になってもらいたいですね。うちもまだまだ環境が完璧に整っているわけではないので現状で満足して、このまま何も手を打たなければ社内の技術は廃ってしまう可能性も大いにあり得ると思います。
新しいものを取り入れるときは先を見据えた覚悟が必要ですね。
― そういった「人を育てる」熱い想いが、今の森下建設の高い技術力につながっているんですね。森下建設さんは現場を拝見していても若手社員の方への手厚いフォロー体制が見受けられますが、実際に「育てる」上で副社長が意識していることはありますか?
特別な意識はしていません。
強いて言えば自然なまま接することですね。具体的でなくて申し訳ないですが、何十年もこういう人と関わる仕事に携わっているからか、人の気持ちは結構読めるんです。今何を考えているか、何で悩んでいるのかとか。それに合わせて自然に接しています。
もちろんわからないことがあったらすぐ教えてあげるとか、そういった気遣いは常に意識しています。自分でやれと言って突き放してしまうと、たとえその人に才能があってもくじけてしまうかもしれませんから、そういったところは常に気を付けています。
陰ながらサポートしつつ、できることを増やしてもらうことで、自信につながるように、いつでも相談に乗れる体制を意識的に作っています。
あとは、きちんと基本を教えるということですね。
新しいことに挑戦することは大事ですが、基本を無視してむやみに新しいものを取り入れるべきではないと思っています。
パソコンができて図面が描けても、作業によっては考え方が変わります。それを助けるのが現場の基礎知識です。若手社員ほど「基本や現場を知らない」ということで困っていることがあります。
そういった思いをさせないためにも、新しい技術を取り入れるときは基本の知識を合わせてしっかり教えるようにしています。
― 副社長のサポートが今の森下建設の高い技術力につながっているんですね。経営面での管理でも副社長はご活躍されていると思いますが、経営陣はどうあるべきだと考えていますか?
従業員を第一に、無理をさせないことですね。
だから私としては、いきなり大きな挑戦はしない方が良いと思っています。もちろんうちの社長のやっている挑戦とかは良いことだと思っているんですけどね。ただ、あまりにもジャンプしすぎることがありますから、そういうところはもう少し抑えてほしいとは思いますね(笑)
振り返ってみたらだれもついていけてないなんてことになると意味がありませんから。
一度に背伸びさせるのではなく徐々にステップアップしていくことでみんながついていけるようにうまく調整することもまた今の私の仕事ですかね。新しいことに挑戦するからには事前に計画立てて、金銭にしても管理にしてもしっかり経営的にやるべきですね。そうすれば自然と従業員に還元できます。
仕事をするうえで精神的に嫌な思いをさせないような環境を作ることが私たち経営陣のやるべきことだと思っています。負担ばかり強いていては、頑張ろうという気持ちが薄れてしまうものです。
昔、「あんたのためなら死ぬ気で仕事します!」と従業員に言ってもらえたことがあったんです。そんな関係を築ける人でありたいですね。従業員が各監督のためならやってやろうと思うのと同じように、この経営陣のためならやってやろうという気持ちにできるかできないかが経営者の手腕でしょうかね。
思いやりを持ち続けていれば部下は応えてくれると思っています。
敬う気持ちを忘れないから信頼が生まれる
― 社員さんたちを本当に気遣ってらっしゃるんですね。副社長は行政の方々との窓口のような役割をされていると思いますが、行政の方々とやり取りをされるうえで大切にされていることはありますか?
大切なのは敬う気持ちを持つことですね。
年齢関係なくたとえ年下でも敬意の気持ちをもって常に接しています。役所の人にかかわらず、人と話すときは相手の気持ちを汲んでから話すようにしています。もちろん、すべて相手に合わせるわけではなく、違うときは違うと伝えます。すべて「そうですね」と言っていてもお互いのためになりませんから。
それからまめにコミュニケーションをとることですかね。
先ほども役所の方からお電話をいただきましたが、そんな風に気軽に連絡をいただける関係が良いですよね。嫌われてしまうとせっかくいい仕事をしていてもすべてマイナス点になってしまって最後には本来もらえるはずだった評価が落ちてしまうこともありますから、コミュニケーションを常に意識するように各監督にも伝えています。
役所の方からうちの社員について、「よくやっているね」と言っていただけると嬉しいですし、それだけで上司の僕らもなんだか胸を張って役所に行きやすくなりますからね。
― そのコミュニケーション能力はどのように身に着けてこられたのでしょうか?また、各監督の方々へはどのような指導をされているのでしょうか?
やっぱり日頃の経験ですね。若いころは転勤族だったので、北海道から沖縄まで幅広い人たちと接してきたんです。
最初は「なんでいうことを聞いてくれないんだ」という思いもあり、喧嘩ばかりしていましたが、「どうしたらうまく付き合っていけるんだろう」と思い始めてから人との付き合い方が変わりましたね。まず、この人はどういう風に話していったらいいかなと考えながら話していくようになったんです。
うちの若い監督たちも徐々に経験を積んでいってくれていますよ。この前も役所の担当者さんのご要望についてどう回答するべきか相談をされました。「反発せずに『これはこういうことではありませんか?』と確認してみろ」と言ったら、今朝役所の方から「すみません。私が間違っていました。」と連絡をくれたみたいなんですよ。
そんな風に自分が理解できないことでも反発せずにまずは確認し、丁寧に接することで自分も相手も理解が深まって良い関係が築けるんだと思います。
最初は相手の性格がわからないのは当然ですから、丁寧に低空飛行で話をすれば相手もわかってもらえるものですし、信頼してもらえます。結局、人間関係ですよね。どんな仕事でも。
地域を愛しているからこそ、『地域の守り手』であり続ける。
― 以前、「落石の危険性のある場所を自ら見つけて、役所を何度も訪ねて直接工事の提案をした」というエピソードを伺ったことがありますが、そういった提案ができるのも副社長の日頃の誠実な対応とまめなコミュニケーションがあるからなのでしょうね。
これからはただ仕事を待っているだけではなく、自分たちの仕事が必要な場所を見つけたら提案していく時代ですからね。
地域柄、何かあれば自衛隊よりも警察よりも消防よりも私たち建設会社が一番に駆けつけて地域の皆さんの生活をお守りすることになりますから。
― 森下建設さんは非常に地域に密着されている印象がありますが、地域の方々とのコミュニケーションはどのように取られていますか?
気軽に声をかけてもらえるように地域の催しや集まりには顔を出すようにしています。私たちの仕事は地域のためになりますから、積極的にコミュニケーションをとって、周りの人が応援してくれるような関係づくりを大事にしているんです。
― 石見神楽(石見地方の伝統芸能)の奉納で太鼓をたたきすぎて手首にシップをされていたこともありましたよね(笑) 現場でけがをされたのかと思って心配したのを覚えています。
地元出身の社員も多く在籍していますから、会社全体が地域に根付いているんです。これからも地域に愛され、役所にも信頼される会社であり続けたいですね。
人をつなげる仕事
― 副社長のご協力もあって開催された日本初の市街地レース「A1市街地グランプリ」がNHKを通して全国に放映されたこともあり、求職者からの問い合わせも増えていると伺いました。そんな求職者の方へ向けて、副社長が考えるこれからの森下建設の魅力を教えてください。
うちの会社のいいところって横の連携がすごくスムーズで強固なところだと思うんです。ダメって言ったらやめるし、やろうといえば「よしやろう」と協力してくれる。そういう雰囲気の会社であり続けたいですね。
基本は「人」にありますからね。
まじめにやっていれば見ている人は見ていますから、「森下建設さんに頼めば間違いないだろう」という期待に応え続けることは基本として継続していきます。だからこそそういった会社の体質になじんでくれる人が来てくれたらいいですね。将来的には今よりコミュニケーションをとれる人材をもっと育成して増やしていくことが私自身の目指すところです。
「一緒にやっていこう」という気持ちでないとやっていけないですからね。
そういった気持ちに「仕向けて行く」ことも私たちの仕事ですから技術だけでなく気持ちの面でもサポートを続けるつもりです。
社員や役所、地域を含めた多くの「人」を大切にする経営陣の思考・姿勢が森下建設さんの基盤にあるのですね。
お時間をいただき、ありがとうございました。
取材日: 2021-04-16
企業情報
社名 | 森下建設株式会社 |
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事業内容 | 土木事業、建築事業、住宅事業、解体事業、不動産事業、江津市委託事業 |
コーポレートサイト | https://morishita-co.jp |
代表者 | 代表取締役 森下幸生 |
設立 | 昭和21年1月 |
従業員数 | 51名(2024年3月現在) |
本社所在地 | 〒699-4221 島根県江津市桜江町市山543番地16 TEL(0855)92-1360 FAX(0855)92-0182 |
営業所 | 東京営業所 〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町18-4 二宮ビル5F 江津営業所 〒695-0021 島根県江津市都野津町2342-3 浜田営業所 〒697-0015 島根県浜田市竹迫町2731-25 川本営業所 〒696-0004 島根県邑智郡川本町川下1267-3 |
資本金 | 20,000,000円 |
株式公開 | 非上場 |