基礎知識-3次元測量
基礎知識 ―3次元測量

その工事現場でドローンはOK!?今さら聞けない建設現場でドローンを使う時の注意事項まとめ

はじめに

建設現場に限らず、物流、農業、点検、防犯、映像など、いろいろな業界で活躍し、ホビー用から産業用まで幅広く流通しているドローンですが、最近ではドローンに関するニュースを目にする機会も増えてきましたね。

建設業界の皆さんにとっては、現場管理で空撮をしたり、ICT活用工事で3次元測量をしたりなど、現場でドローンを使ったことがある方も多いのではないでしょうか。

既に自社でドローンを使っている方、これから導入しようとしている方に、ここだけは気を付けて欲しい建設現場でドローンを使う時の注意事項をわたしたちの現場経験をもとにまとめてみました。

※土工現場での運用情報が主になります。

ドローンはどこでも、誰でも飛ばしていいわけじゃない

ドローンとは俗称で、皆さんが土工現場で使われるものは、専門的には「回転翼航空機」に属するものがほとんどです。「飛ぶカメラ」とも言われ、空を飛ぶもの=航空機(無人航空機)として、法律で定めるルールに則った運用が求められます。その法律が「航空法」です。
詳しくは、国土交通省 無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルールをご覧ください。

ネットショップや家電量販店で簡単に手に入るドローンですが、いつでも、どこでも、誰でも飛ばしていいわけではありません。
上述のサイトをよく確認してみると、ドローン使用時の禁止事項や決められた飛行方法など、一度見ただけでは理解できないくらいの注意事項がたくさんあります。

実際、土工現場で使う時にはどのルールが適用になるのか、何を確認すればいいのかを、これから5つのポイントに絞ってお伝えしていきたいと思います。

建設現場のドローン利用で確認するべき5つのこと

1 ドローンを飛ばせる場所か

飛行禁止区域である空港周辺や人口密集地域などは、事前に調べれば該当地域かどうかがすぐわかるようになっているため、すでにご存じの方も多いと思います。
※禁止区域の確認は国土地理院地図が便利

それ以外で気を付けなければいけないのが、「第三者又は第三者の建物、車両などから30m以上離れて飛行できる」場所かどうかという事です。

具体的にはどのような状況のことを言うのでしょうか。

第三者というのは、ドローンを飛行させる者(管理者および操縦者など)以外を指します。
業務としてドローンを取り扱う場合は、操縦者が属する会社(団体)がその管理責任を問われますので、ドローンを飛行させる者とは会社ということになります。
第三者とはその会社に属さない者であり、土工現場では以下のものが該当すると考えられます。

  • 通行人、他社の作業員
  • 住宅、倉庫、電柱、電線、ガードレール、信号機、道路標識などの自社所有以外の建物や物件
  • 一般通行車両や他社所有のダンプ、建設機械など

その現場は、離陸~飛行~着陸までの一連の作業中、これらのものから30m以上の距離を保つことができる場所でしょうか。
現場内を一般の方や車両が通行することは考えにくいですが、他社の作業員や現場車両が行き交うケースがほとんどでしょう。

じゃあ、建設現場ではドローンは使えないのか?というと、そうではありません。
事前に申請を出して航空局の承認を受ければ、第三者から30m以上の距離を保つことができなくても飛行させることができます。

2 航空局への申請と承認を得ているか

前項でお伝えした通り、一般的な建設現場では、第三者から30m以上の距離を保って飛行させることは難しいと言えます。ですので、事前に航空局の承認を受けておくことをおすすめします。
飛行予定日の10開庁日以上前までに、申請を出しておくのが良いとされていますが、毎回毎回申請を出すのも手間がかかるのが正直なところです。

そんな時は「包括申請」をしておきましょう。

包括申請とは、「同一の申請者が一定期間内に反復して飛行を行う場合又は異なる複数の場所で飛行を行う場合の申請」のことを言います。
土工現場で運用する際には、次のような条件で包括申請を出されてはいかがでしょうか。

  • 地上又は水上の人又は物件との間に 30mの距離を保てない飛行を行う場合
  • ●●県内全域など(工事受注対象地域全域)
  • 1年間(継続的に飛行させる場合)

申請を出される際には所定の方法がありますので、詳しくは、国土交通省 無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルールをご覧ください。

また、3カ月を超えた期間の包括申請で飛行許可・承認が得られた場合、定期的な実績報告が求められますのでご注意ください。

3 操縦士の技能は十分か?

航空局への申請は出せばいいというものではありません。その申請を承認してもらえて初めて飛行可能になります。そのためには、様々な条件をクリアする必要があります。
ここで注目したいのは「操縦士の技能」です。

ドローンを飛行させるために必要な操縦士の条件として、所定の知識・能力に加えて「10時間以上の飛行経歴を有する」必要があるのは、皆さんご存知の通りだと思います。

航空局は「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」を基に、該当の申請を審査しています。
その中に、操縦士に求められる技能について明記されているのですが、お伝えしたいのは「10時間以上の飛行経歴」だけでは十分ではない場合があるということです。

事前に承認を得ておくことをおすすめしている「人又は物件から30m以上の距離を確保できない飛行」についての審査要領の中に、操縦士の飛行経験として「使用機体で飛行を行おうとする日からさかのぼって90日までの間に、1時間以上の飛行」が必要だとあります。
※申請時に添付する飛行マニュアルに別条件を明示していない場合

直近の約3か月間で、1時間以上そのドローンを飛ばしたことがある人じゃないといけないということです。
ドローンを飛ばしたことがある方ならお分かりだと思いますが、現場状況を記録するための空撮程度であれば1回の飛行はだいたい10~15分程度でしょう。3カ月の間に、4~5回以上は定期的にドローンを飛ばしている必要があります。

ドローンは航空機ですから操縦者は立派なパイロットです。もちろん、安全な飛行を実施する上で、ドローンに関する知識、操縦技能の継続的な習得、さらなる技能向上のために常に訓練を行っておく必要があることは言うまでもありません。
航空法適用外の屋内施設や事前に許可を得た場所など、自社の操縦士が定期的に訓練できる環境を準備しておくと安心ですね。

管轄の警察には連絡しているか?

建設現場でドローンを飛行させる場合、おおよその飛行高度は50~80m程度が多いと思います。それだけ高い場所を、生き物ではない白や黒の物体が「ブーン」と音を立てて飛んでいるわけですから、目撃した方が何かしらの理由で警察に通報されるケースが考えられます。

昨今のドローンにまつわるニュースで、あまりよろしくない印象を持たれてしまっているのも要因の一つでしょう。その可能性を考慮して、その地域を管轄する警察には事前に連絡を入れておくことをお勧めします。

ちなみに、3次元測量でドローンを使用する場合、地表に「対空標識」という目印を設置して上空から撮影します。その標識の座標を計測するという作業もあわせて行うのですが、その設置場所が道路である場合には、道路占有許可が必要ですので忘れず対応しましょう。

道路・河川管理者には連絡しているか?

こちらの連絡も、前項の警察への連絡とほぼ同じ理由です。
警察も同様ですが、連絡した窓口によって必要書類の種類、提出有無は異なります。
こちらについては、適宜担当窓口に確認されることをおすすめします。

現場でのドローン体験談

ここまで、特に気を付けていただきたい内容を5つに絞ってお伝えしましたが、建設現場でドローンを飛ばす際に気を付けるべき項目は、まだまだたくさんあります。
この項目では、実際にわたしたちがドローンを使った現場で体験したことを、少し違った目線でお伝えしたいと思います。

現場を止めない

ドローン空撮を依頼され、現場に到着してびっくり。
その現場は、隣接する他の現場から10分に1回のペースでダンプが行き交い、バックホウ2台にローラー1台が終始稼働しっぱなしだったのです。

これではドローンは飛ばせない…
全ての作業をストップしてもうらうのか…

現場では、関係する多くの方々が工期を遅らせることの無いよう、安全第一で効率的に作業をされています。
そんな中、ドローン空撮のためだけに他の工程を止めるわけにはいきません。
もちろん、事前に打ち合わせを行った上で臨んだのですが、予定通りに事が運ばないのが現場です。
ドローン空撮は工程上必要な作業ではありますが、優先順位を考えます。直ちに現場監督に相談の上、お昼休みの間に作業を行うことになりました。

作業は無事に終了し、依頼された画像もバッチリ、午後の作業開始にも間に合いました。

「現場を止めない」

建設現場での円滑な作業は、工事成功の必須条件です。
ドローン飛行に限らず、常に変化する現場では臨機応変で柔軟な対応が必要だと感じた体験でした。

休憩中のダンプの運転手さんが、「ドローンかっこいいね」と少年のような笑顔で眩しそうに空を見上げていたのが印象的でしたが、これはお昼休みに飛ばしたことで見られた光景かもしれませんね。

ドローンはおもちゃじゃない

最近のドローンは小型化され、高性能なものが多く、事前の設定どおりに自動飛行をして決められたミッションを完了してくれるという優れた機能があります。
だからと言って、ポチっと簡単な操作で飛ばせるわけではありません。

事前の綿密な飛行計画、飛行ルートの設定、安全管理体制の確認を行った上、飛行中の操縦士は緊急事態に備えた操作シミュレーションを頭の中で行いながら、プロポと呼ばれる操縦機器を持って常に機体から目をそらさず集中しておく必要があります。
また、安全な飛行を実施する上でも、準備段階から必ず2名以上の体制で臨みます。

「ちょっと今から現場に寄って、ぱぱっと写真撮ってよ」

なんていう安易なお願いは、例え自社の操縦士であっても避けた方がよいでしょう。

「ドローンはおもちゃじゃない。それを土木部の全員が意識して欲しい」

これは、わたしたちのドローンスクールを受講された建設会社の従業員の方のお言葉です。

やっぱり便利なドローン空撮

「ドローンを飛ばすって大変だ」

正直そう思われた方もいらっしゃるかもしれません。
ただ、やっぱり便利なことには変わりはありません。

現場進捗をわかりやすく説明するために、上空からの空撮画像は最適です。
現場を3次元化するためのコストは、空中写真測量をすることで低くなります。
このような作業を外注せず、自社で運用できるようになれば、より効率的かつコストダウンが図れます。

ドローンを取り扱うための適切な運営と管理を実施すれば、たくさんのメリットがあるんです。
ぜひ積極的にドローン空撮の自社運用をされることをお勧めします。

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