はじめに
ICT施工で必要な作業工程の一つに、3次元測量があります。対象物の3次元座標を取得するために、単点ではなく面的な計測ができるのが3次元測量の特徴です。
ICT工事で行う3次元測量と言えば、ドローンやレーザースキャナーを使うケースが多く、最近では地上レーザー測量の需要が高まっているように感じます。
わたしたちも、ドローンや地上レーザースキャナーを使って、ICT工事で測量を行っています。今回は使用頻度が高まっている「地上レーザー測量」について、測量の流れや機器の使用方法を、実際の作業内容をご紹介しながら簡単に解説します。
レーザー測量とは
レーザー測量とは、連続的にレーザー(LAZER)を対象物へ照射し、対象物との距離を測定することで、構造物や地形などの形状を3次元座標(XYZ)の点群データとして取得する測量方法です。
レーザー測量には、ドローン(UAV)や航空機などから測定する空中レーザー測量、走行する車などから測定する車載レーザー測量、地上から測定する地上レーザー測量などがあります。
今回解説する「地上レーザー測量」では、特定の位置にレーザースキャナーを設置して、機械を回転させながらレーザー光を照射することで、その方向と距離から計測した点群を収集できます。
Trimble SX10を使った地上レーザー測量の流れ
ここからは、わたしたちが実際に使用している「Trimble SX10」を参考に、地上レーザーを使った測量作業を簡単に説明します。
※Trimble SX10の導入レポートはこちら
1.事前準備
【測量計画】
地上レーザー測量で重要なのは、レーザースキャナー本体の器械設置(器設)の位置です。
留意ポイントは次の通りです。
- 計測精度が確保できる距離、範囲でレーザーが照射できること
- 少なくとも2方向から照射するなど、計測結果に影ができないよう万遍に測定できること
- 図面などから測定範囲に漏れが無いよう、事前に器設位置を計画しておくこと
また、わたしたちはTrimble SX10をTSC7という専用コントローラーで操作しています。
本体はもちろんのこと、コントローラーの充電チェックやOSのアップデート、座標登録などの細かい事前準備は、当日の作業性を左右するためとても大切です。
2.当日作業
【機材積込】
地上レーザースキャナーに限らず、精密機械である測量機器の取り扱いには十分注意します。
慎重に扱い、なるべく大きな振動を与えたり傾くことが無いよう、わたしたちは、本体を車の座席に置いてシートベルトをかけて運ぶようにしています。
【計測作業】
①器設
現場状況や工事基準点位置を確認したら、器設します。
次の2つの方法で器械座標を確定します。
- 既知点に設置し、後視点観測で確定
- 2点以上の既知点を観測し、後方公会法により確定
※工事基準点を既知点とします。
②計測エリア選定
スキャン設定画面に移り、コントローラー画面でスキャンしたい範囲や測定密度などの設定を行います。
選択範囲の広さや測定密度によって、計測時間はまちまちです。早ければ数分、全方位を高密度でスキャンする場合は1回のスキャンに30分以上かかることもあります。
設定画面から計測予測時間を確認しながら、それぞれ設定を行います。
③スキャニング
スキャンを開始します。後は本体のスキャニングが終了するまで待ちます。
この間に、次の器設位置や測定範囲の確認などを行っておきます。
以上の作業を器設位置ごと何回か繰り返し、対象範囲すべてを計測します。
計測後すぐに点群が取得されているため、計測漏れがないかどうかをコントローラーの画面上で確認することができます。
3.事後作業
【データ処理】
その後は、机上作業になります。
計測点群をコントローラーから抽出し、専用ソフト「Trimble Realworks」を使って点群処理やデータ統合などを行います。
計測点群データを、次の工程(3次元設計や土量計算など)で使用するための形式に変換、出力して一連の3次元測量作業は終了です。
測量成果は、測量報告書や精度確認書類など、お客様の要望にあわせた添付資料とともに納品します。
まとめ
1点ずつの計測しか出来ない単点計測に比べて、レーザー測量は面計測ができるため、作業性は大幅に上がります。
同じ面計測が可能なドローンを使った空中写真測量では、大量の写真から3次元形状を復元させる(=点群化する)という作業が必要ですが、地上レーザー測量ではその作業は不要となり、計測後すぐに点群データが取得できるため、さらに効率的です。
また、「地上」に計測機器を設置するため、「空中」から計測するドローンに比べて安全性も高まりますし、航空法等の法規制の影響が無いことも導入しやすい要因の一つです。
さらに、荒天時の作業は地上レーザー測量でも難しいですが、強風時には飛行できないドローンに比べると、天候に左右される頻度は低くなります。
一方で、レーザースキャナーは高性能であるが故に、まだまだ高価な機械です。
加えて、軽量化されてきているとは言え、トータルステーションなどの従来測量の機械に比べると重量感があります。現場で持ち運びすることを考えると、足元の悪い災害現場や急斜面の地形が多い山間部、計測範囲が広域な現場には不向きになります。
今後、レーザースキャナーがより軽量化され低価格になり、導入のハードルが下がれば、もっと気軽に現場で3次元測量ができるようになります。
あらゆる現場を3次元化することは、ICT施工の推進を加速させるでしょう。地上レーザー測量の普及がその一役を担うことを期待します。
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