はじめに
この記事にたどり着いた皆様は、i-Constructionについて、ある程度聞かれたことのある方が多いかもしれません。
2019年令和元年の今、建設業界ではすっかり定着してきた用語です。
「i-Constructionについてはもう大体わかっているけど、最近の国土交通省の動きを知りたい」という建設業界の方や、「ドローンやCADの分野等で、新たに土木・建設業界に足を踏み入れて、i-Constructionについて改めて知りたい」という方に向けて、今後ますます導入が進むi-Constructionについて最新の情報を交えてわかりやすく解説します。
目次
i-Constructionとは
i-Constructionとは、測量から設計、施工、検査、維持管理に至る全ての事業プロセスでICT(情報通信技術)を利用し、建設現場の生産性を飛躍的に向上させることを目指した、国土交通省の取り組みです。
政府は、i-Constructionの推進を通して、2025年度までに建設現場の生産性を20%向上させることを目標に掲げています。
i-Constructionの3つの施策
- ICT技術の全面的な活用(ICT活用工事)←Pick up!
- 規格の標準化(コンクリート)
- 施工時期の平準化
上記3つの施策の中でも、重点的に取り組まれているICT活用工事についてみていきます。
ICT技術の全面的な活用(ICT活用工事)とは
働き方改革の流れもあり、建設業界に限らずICT活用はあらゆる業界で推進されています。
ちなみに、以前はICTではなくITがよく用いられていました。 ICTとは、”Information and Communication Technology”の略で、 ITの間に”Communication(通信、伝達)”という言葉が入っています。
このようにICTには、ITの情報処理技術に加えて、通信を利用したネットワークを活用していこう、という意味が含まれているのです。
それでは、土木・建設業界で“ICTを活用する”とは具体的にどのようなことを言うのでしょうか。
建設生産の各プロセスをみていきましょう。
測量方法
人手と時間がかかる従来測量にくらべ、ドローン(UAV)や地上レーザースキャナ(TLS)などを使用することで、施工対象範囲を従来の2次元ではなく3次元的に計測することが可能になります。
設計データの作成
従来施工同様の縦横断図に加えて、3次元測量の結果(点群)を合わせて土量計算が可能になります。
施工
3次元設計データを衛星測位システム(GNSS)で位置情報を取得したICT建設機械に転送します。自動制御機能を使った施工が実施可能です。
このように、建設現場の各プロセスにICTを活用すると、時間・安全性・正確性すべてにおいて、生産性向上につながる効果が期待されます。
i-Constructionが推進されるようになった背景
前述のとおり、i-Constructionとは、生産性を向上するための取組です。
このような取組を、政府主導で是が非でも進めていかなければならない理由は、主に以下の2点です。
- 労働者の減少を生産性向上でカバーしたいから
- 若年層や異業種からも労働力が確保できるような業界にしていきたいから
1.労働者の減少を生産性向上でカバーしたい!
以下は、建設業就業者数と建設投資額の推移を示すデータです。(出典:建設業ハンドブック)
建設業就業者が緩やかに減少していく一方で、建設投資額は近年上昇傾向にあります。
建設の需要に対して、労働者が減少すれば経済成長は見込めません。
そこで、労働者の減少を上回る生産性の向上を実現できれば、経済成長を維持できると政府は考えているのです。
2.若年層や異業種からも労働力が確保できるような魅力的な業界になろう!
生産性の上昇を実現できたとしても、建設業界の人口構造にはさらなる課題があります。
以下は、建設業就業者の高齢化の進行を示すデータです。(出典:建設業ハンドブック)
2017年の時点で、55歳以上が34%、29歳以下が約11%と他産業と比べ高齢化が顕著です。そこから見えてくるのは、他産業に比べ、若年層から人気がない、または異業種からの転職が難しいと思われている業界ということです。
そこで政府は、ICTという新しい技術導入により、経験が少ない若手や女性が就業しやすく、異業種からも転職しやすい、さらに安心・安全という魅力的な業界に変えていこう!ということで、i-Constructionの推進を図っていると考えられます。
i-Constructionの歴史
i-Constructionの内容と背景に関連するところでもありますが、ここで、近年の政府と国土交通省の動きをまとめておきたいと思います。
ちなみに、i-Costructionが始まる2015年以前にも、2008年から国土交通省では”情報化施工”を推進する動きが始まっています。
ここでは本格的に生産性向上に向けた取組が開始された2015年からみていきます。
平成27年2015年 | |
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11月 | 「生産性革命プロジェクト」スタート ~i-Constructionが命名される~ |
平成28年2016年 | |
2月 | 「生産性革命元年」宣言 ~i-Constructionが正式に動き出す~ |
9月 | 政府_未来投資会議 スタート 総理より、2025年までに建設業界の生産性を20%向上すると発表 |
平成29年2017年 | |
生産性革命「前進の年」宣言 | |
6月 | 政府_未来投資会議 2017 採択 i-Constructionの取組が緒についたばかりであり、浸透が十分とは言えない。2019年までに、橋梁・トンネル・ダムといった土工・舗装等以外の工種や維持管理を含む全てのプロセスにICT活用の対象を拡大する。 (未来投資戦略 2017) |
平成30年2018年 | |
生産性革命「深化の年」宣言 ~i-Construction ロゴマーク決定~ |
|
6月 | 政府_未来投資会議2018 i-Constructionの深化に向け、来年度までに橋梁・トンネル・ダム工事や維持管理、建築分野を含む全てのプロセスに対象を拡大する。受注者への3次元施工データ提供など発注者側によるサポート体制の充実等を行う。 (未来投資戦略 2018) |
平成31年2019年 | |
3月 | 生産性革命「貫徹の年」宣言 |
6月 | 政府_未来投資会議 成長戦略実行計画 i-Consturctionの貫徹に向け、全国10のi-Constructionモデル事務所で測量・調査から維持管理まで3次元データやICT等の新技術を集中的に活用する。 |
【用語解説】
未来投資会議:第4次産業革命をはじめとする将来の成長に資する分野における大胆な投資を官民連携して進め、「未来への投資」の拡大に向けた成長戦略と構造改革の加速化を図る会議。(国土交通省:i-Constructionの推進より抜粋)
いかがでしょうか。生産性革命 前進 → 深化 → 貫徹 と、国土交通省が建設業界のICT活用を推進していくんだ!という強い意志が感じられますね。
令和元年i-Construction”貫徹の年”の今
それでは、2019年、新元号がスタートした令和元年の動きをみていきましょう。
ICT活用工事の現状は?
着実にICT土工の公告件数が伸びています。(出典:国土交通省 ICT施工の普及拡大に向けた取組)
また、ICT施工による延べ作業時間縮減効果も以下のように発表されています。
土工では約3割、舗装工及び浚渫工では約4割の縮減効果がみられていることがわかります。
2025年の生産性2割向上に向けて、着実に進んでいますね。
国土交通省の今年度(2019年度)の取組は?
ポイントは大きく分けて2つです!(国土交通省 大臣会見)
1.i-Constructionモデル事務所(全国10事務所)とi-Constructionサポート事務所(全国53事務所)の設置
新しいキーワードでもあるICT-Full活用工事(工事の大部分でICTを活用する工事)を実施するモデル事務所を設置し、積極的に地方公共団体や地域企業のサポートを実施。
(出典:国土交通省 報道発表資料)
i-Constructionのさらなる普及・拡大を図るための体制を整える取り組みですね。
2.ICT施工の工種拡大
(出典:国土交通省 ICT施工の普及拡大に向けた取組)
これは、昨年度までの取組を継続・強化する施策ですが、ICT活用の工種を、地盤改良工や法面工等にも拡大することで、道路改良工事や河川改修工事の大部分でICTを活用できるようにしていくという内容です。
このように、2019年度も、i-Construction貫徹に向けて国土交通省も施策を進めています。
おわりに
今回は、i-Constructionの内容や背景のおさらいとともに、政府や国土交通省がどのように考え、施策を進めていこうとしているのか、についてまとめました。
とにもかくにも、ICTを活用して生産性の向上を図りたい!業界を改革していきたいという強固な思いが伝わってきます。
建設業は、地域のインフラ整備やメンテナンスなどの重要な担い手であると同時に、地域経済・雇用を支え、災害時には最前線で地域社会の安全・安心の確保を担う地域の守り手として、国民生活や社会経済を支える大きな役割を担っています。
その建設業界を持続可能な、魅力的な業界にしていくことは、日本全体にとっても欠かせない、喫緊の課題といっても過言ではありません。
この記事を読んでいただいた方の中には、会社から言われて、あるいは経営者として、自社のICT活用を何とか推し進めていかないといけないという状況の方もいらっしゃるかもしれません。
ICT施工を進めていくには、ICT建機やドローンなどの最新機械にかける投資や、現場監督の意識改革など、様々な困難も待ち受けていることでしょう。
ですが、今、i-Constructionを進めていくことは、未来の魅力的な建設業界を作り出していくことに繋がっています。
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