導入・実践ノウハウ-ノウハウ
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「ICT活用工事の標準化」に向けた国土交通省の動向

みなさまは令和3年からICT活用工事の発注方式が拡大され、発注者指定型・施工者希望Ⅰ型の対象工事が増えたことを覚えていますでしょうか?

この変更は、ICT活用工事の標準化を目指す一環として実施されたものです。

わたしたちはDX・i-Constructionスペシャリストとして各地域で活動しています。

行政機関や業界団体が主催する研修セミナーに外部講師として招かれる機会も多くあります。

最近では、地域による違いはありますが、各地の主催者や受講者からの反応を通じて、ICT活用工事の標準化への適応が求められる状況が増加していることを感じています。

今回のコラムでは、先日(2023年9月14日)国土交通省より公開された第17回ICT導入協議会の最新資料をもとに、わたしたちが感じる各地の状況とあわせて、ICT活用工事の標準化に向けた現在の動向を解説したいと思います。

参考:国土交通省「第17回ICT導入協議会(令和5年9月14日)

現在のICT活用工事の実施状況

第17回ICT導入協議会の資料には、2022年度の土木工事におけるICT施工の実施件数が記載されています。

それによると、公告件数に対するICT実施の割合を示すICT実施率は国土交通省の発注工事(直轄工事)で87%、都道府県・政令市の発注工事(自治体工事)では21%となっています。

ICT施工の普及拡大に向けた取組
出典:国土交通省 令和5年9月14日ICT導入協議会「資料‐1 ICT施工の普及拡大に向けた取組

注目したいのは自治体発注工事の実施状況です。公告件数自体は右肩上がりに増加していますが、ICT実施率は3年連続21%と横ばいの状態です。

「DX・ICTに強くなる」というコンセプトのもと、全国の中小建設企業を中心にICTサポート事業を行うわたしたちは、この実施状況をみて今まで以上にサポートを強化していく必要があると身が引き締まる思いでおります。

ICT施工の普及拡大に向けた取組
出典:国土交通省 令和5年9月14日ICT導入協議会「資料‐1 ICT施工の普及拡大に向けた取組

建設企業の格付け(等級)別のICT施工経験割合(直轄工事受注実績に対する割合)は、Aランク・Bランク企業で90%以上、Cランク企業で63.3%、Dランク企業で14.3%となっており、主に自治体発注工事を受注するCDランクの地域企業へのICT普及拡大は、引き続き国としても重要視していると考えます。

以下のコラムで地域建設会社のICT取組み事例をご紹介していますのでご参考ください。
 現場単位で利益を出すためのICT導入【森下建設株式会社の実績①】 現場単位で利益を出すためのICT導入【森下建設株式会社の実績②】 自治体発注工事で初ICT施工!中小建設企業が今からチャレンジできる理由とは これが総合マネジメント効果!ICT施工初チャレンジの現場監督が完工後に言った言葉とは?

ICT適用工種の拡大

2022年度に追加された「小規模土工」では、「小型バックホウ向けのマシンガイダンス」や「モバイル端末を用いた3次元計測」といったICT技術の導入が可能になり、ICT適用工種が工事規模を問わず拡大されているのがわかります。

これらの工種拡大とあわせて、今年度も継続して新たな要領・基準類改訂の検討が行われています。

ICT施工の普及拡大に向けた取組
出典:国土交通省 令和5年9月14日ICT導入協議会「資料‐1 ICT施工の普及拡大に向けた取組

以下のコラムではICT小規模土工を始めとしたICT適用工種拡大について解説しています。あわせてご参考ください。
 ICT小規模土工も見積対応できる?国土交通省 令和4年度積算要領のワンポイント解説 その小規模土工現場はICTに向いている?ICT現場監督が語る見極めポイントとは 国土交通省・国土技術総合研究所「令和3年度 産学官連携によるICT施工の基準類作成に関する公募」への提案

ICT活用工事の積算基準の変化

2016年度から始まったICT土工では、まず実施要領や積算要領を含む15の基準類が発表され、いくつかの改訂を経て今日に至ります。特に近年の改定を見ると、i-Construction発表当時と同じ条件で積算することが難しい状況になってきています。

3次元起工測量および3次元設計データ作成費用見積参考資料の改定

「3次元起工測量」と「3次元設計データ作成」の費用は、現時点まで見積徴収による積上げで計上するようになっています。ところが、2020年度から、国土交通省は見積参考資料を発表し金額の妥当性が問われるようになり、令和4年度にはその算定式が改定されています。

令和4年度国土交通省土木工事・業務の積算基準等の改定
参照:国土交通省プレスリリース「令和4年度国土交通省土木工事・業務の積算基準等の改定」より

3次元出来形管理費用の積算基準の当面の運用

2023年度のICT積算基準においては、「3次元出来形管理費用」の計上方法に新たな方針が加わりました。これまでは、一律の補正係数を乗じて計上されていたのに対し、新たな方針では、より実態に即した積算となるよう見積との比較により、適切に費用を計上する運用となりました。

令和5年度国土交通省土木工事・業務の積算基準等の改定
参照:国土交通省プレスリリース「令和5年度国土交通省土木工事・業務の積算基準等の改定」より

以下のコラムでも今回のICT積算基準改定について詳しく解説していますのであわせてご覧ください。
 真の生産性向上とはーDXとICT技術導入は建設現場の利益化につながるのかー

2023年度BIM/CIM原則適用後の方針

2023年度から運用が開始されたBIM/CIM原則適用ですが、適用後に関しても方針が発表されています。

現時点の「まずはやってみる。3次元データを使ってみる」というアプローチから、今後は測量~設計~施工~維持管理までの「建設生産システム全体」を対象に、デジタル技術を高度に活用することを目指し、適用範囲を拡大していく方針が示されています。

これから、受発注者双方に対して求められるBIM/CIM対応の水準は年々高まっていくことでしょう。

資料‐1 BIM/CIMの進め方について
出典:国土交通省 令和5年8月10日BIM/CIM推進委員会「資料‐1 BIM/CIMの進め方について

以下のコラムでBIM/CIM原則適用について解説しています。あわせてご参考ください。
 いよいよ待ったなし!令和5年度BIM/CIM原則適用でやるべきこと 道路改良工事における施工用BIM/CIMデータの活用事例(森下建設株式会社)

まとめ

ここまで最新の国土交通省の情報を参考に「ICT活用工事の標準化」について説明しました。国土交通省は2025年までにi-Constructionの推進によって、建設現場の生産性を2割向上させる目標を掲げ、その達成に向けて着々と取り組みを進めています。

また、建設業界では「2024年問題」と呼ばれる、罰則付き時間外労働時間の上限規制適用が迫っています。

これからの社会情勢を考慮すると、地域の建設会社は「ICT活用工事の標準化」に対応するための準備を急ぐ必要があります。ICT活用工事の積算基準が厳格化する可能性を考えると、今のうちにICT施工経験を積んでおくことは企業の存続にとって重要な要素になるでしょう。

もちろん、様々な事情があることを理解していますが、このコラムが未来に向けて前進する何かしらのきっかけになれば幸いです。

国土交通省の各地方整備局や自治体では、ICTサポート制度を整備されている場合が多いので、まだ実績が少ない建設会社の方は有効活用されることをおすすめします。

以下のコラムではICTサポート制度をご紹介していますのであわせてご覧ください。
 ICT施工をスムーズに進めるための支援「総合マネジメント」とは【前編】 ICT施工をスムーズに実現するための支援「総合マネジメント」【後編】 ICT施工がうまくいかない!?問題点と解決方法【総合マネジメント番外編】 活用したい!ICT施工に関する補助金・融資等の制度 その(1) 活用したい!ICT施工に関する補助金・融資等の制度 その(2)

建設ICT.comを運営しているわたしたち(ストラテジクスマネジメント株式会社)は関東地方整備局のICTアドバイザーや中国地方整備局の中国ICTサポート企業に登録し、全国でICTサポートサービスを提供しています。

建設会社に合わせた「カスタマイズセミナー」や、現場ごとの「オンライン総合マネジメント」、そして「ICT施工に特化した年間電話サポート」などのサポート内容もさまざまです。

また、業界団体、重機メーカー、ICTソリューション提供会社(3次元ソフトウェア、測器会社など)の方々にも研修・セミナーを中心にサービスをご活用いただいています。

インフラDXやICTの導入に関する課題やご質問がある際には、お気軽にお問い合わせいただければと思います。

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